台所のすみっちょ...風子

 

 

反射。 - 2005年06月04日(土)

最寄の駅に一風変わった店がある。

そこは、少し前までただのスナックだったのだが、

最近、「セッションのできる店」として再オープンした。

入り口の黒いボードには蛍光ペンでこう書いてある。

「当店にはカラオケはありません。楽器好きが集い、
 セッションを楽しむお店です」

そして、最後の方に「お気軽に!!」とも。


時々、私達夫婦の間でこの店の話が出るのだが、

昔、友人とバンドを組んでいた楽器好きの旦那は言う。

「ふら〜と入って知らない人とテケテケ引けるかよ」

どうやら、いくらお気軽にと言われても、

いきなり他人と・・というのは気が乗らないものらしい。

だからだろうか、そこはいつ覗いてもガラガラである。


今日の夕方も私はその店の前を通った。

すぐに入れるようにという配慮から、入り口のドアは常に開けっ放しだ。

中にエレキギターが何本かとドラムが置いてあるのが見える。

店はやはり今日もガラガラで、マスターとおぼしき男性がいるのみ。

彼はドア背にし、黒いエプロン姿で一人座りギターを弾いていた。

天井からやや斜めに射すオレンジのライトが、マスターの頭に当たる。


マスターは・・ハゲ。

磯野波平ふうなハゲ。

そのツルツルしたてっぺんに当たるライトの光を

私は吸い込まれるように見入った。

そして思うのだった。

あんなに寂しげで悲しげな光の反射は見たことがない・・と。



おしまい。



...




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