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アウト。 - 2005年06月05日(日) このアパートに住んで最も緊張するのは、 出掛けるときと帰って来たときである。 隣りのSさんと会ってしまうのを私は恐れているのだ。 うっかり、出くわそうもんなら、これが大変。 必ず何か言ってくる。 それは、注意であったり、お願いであったり、命令であったりで、 例えば、ベランダに置きっ放しにしてある弟の荷物を 「あんたのとこのベランダ、ゴミ屋敷みたいだから片付けなさい」とか 「日曜日の朝の草むしりに参加しなさいよ」とか 「これに署名してよ」と、有無も言わさずどっかの党絡みの 運動に署名させられたりとか。 だから最近、私は鍵を閉めたり、開けたりするのがやたら早くなった。 帰って来るときなどは、鍵を早々に取り出し、アパートの 敷地に入る前から、スムーズな開錠のためのイメージトレーニングをしたりする。 彼女に会わないためには、1分1秒が大事なのである。 今日出掛けるときのこと。 外に出ようとして、玄関のドアを開けようとしたら、 すぐそばにSさんのひねた声を聞いた。 慌てて、ドアハンドルから手を離し、耳をドアに当て外の様子を 伺った。明らかにSさんが扉一枚を挟んで外にいる。 どうやら彼女は一人、猫たちに何か語りかけているようであった。 一度くつを脱いで、待機すること10分後、再度耳をドアにつけ、 外の様子をうかがった。今度は音はしない。Sさんはいない様であった。 くつを履き直し、私は勢い良くドアを開けた。 すると、目に飛び込んできたのは、 やっぱりSさんのニヤついた顔。 アウト〜〜〜〜!! おしまい。 ...
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