ミドルエイジのビジネスマン
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2002年10月20日(日) グリーンマイル

テレビの映画番組の録画でスティーヴン・キング原作の「グリーンマイル」を見た。スティーヴン・キングの小説が原作になった映画は、小説の世界そのままに再現されていて期待を裏切らないのだが、それだけに、小説を先に読んでしまうと映画で追体験するのが怖くて躊躇してしまう。いやいや、本当に恐ろしいのだ。

看護婦が自分の大好きな小説家を自宅に監禁して逃げられないように足を折って無理矢理小説を書かせてしまう「キャリー」など、ビデオ屋さんでパッケージを手に取っても決断がつかず、何度棚に戻したことか。ビデオを借りると決めた時の怖さを思い出しても手が震えるようだ。

その意味で、狂気に取りつかれた男と一緒に雪に閉ざされたリゾートホテルに閉じ込められてしまう「シャイニング」は、今でも怖くて見ることができず、思い出したくもない(でも、いつか見るんだろうな)。

「グリーンマイル」は、病気を治す不思議な能力を持った黒人の大男が登場する、電気椅子のある監獄の物語だが、なんと言っても冒頭で幼い姉妹が殺されてしまうのが許せなくて、他の物語のように恐怖におののくのではなく、かわいそうでならないのだ。善良な黒人は無実の罪を背負ったまま電気椅子に座ることとなるのだろうか。全体としては心の暖まる物語だ。映画の中で、善良な大男は自分が人々を癒す反面、人間の醜悪な内面を覗くことになるので疲れてしまったと告白する。

「グリーンマイル」とは全く関係ないが、出家した小説家の瀬戸内寂聴さんが先日テレビに出ていて、明るい顔で話をしていた。彼女のところにも、死ぬほどの苦しみを訴える人々が毎日やってくるに違いない。彼女も、日々、人の内面の奥深くを覗いているのだろうが、あれで疲れ果ててしまわないのだろうか。

映画の舞台は1930年代のアメリカだろう。森のはずれに刑務官の小さな家があり、夕暮れ時に優しい奥さんが食事を作っている。食卓の上の木製ラジオから流れてくる甘い歌声を聞きながら旦那さんが夕食のできあがるのを待っている。昔、普通にあったであろうそんな生活の一コマがさりげなく織り込まれ、現実感を高め、不思議な力の物語もいつの間にか現実のものとして受け止め、引き込まれていく。そう言えば、自分もなぜかあの時代の普通の人々生活を知っており、不思議な力を持つ大男を見たことがあるような気が、しないわけではない。





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