ディリー?闇鍋アラカルト
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獲得性質は遺伝しない・・・というのは高校時代の生物の時間に遺伝に関して講義されたのを記憶しているだろうか? それは、ワイスマンという学者がネズミの尻尾を切ってそれが子孫に影響を与えるかどうかを調べた事が元になっている。 彼は22代、総数1600匹に渡ってその尻尾を切り続けた。しかし、子孫の尻尾は一向に短くならなかったので、「獲得形質は遺伝しない」と結論付けた。 この獲得形質の遺伝しない事については今も教科書に書かれているのではないかと思う。 ワイスマンのネズミに実験については参考書で知ったのだが、随分手間のかかる実験をやったものだなという感想を持ったのだが、今ではもっと手間のかかる実験なども知っているのでそうは思わない。しかし、何か違和感を持ったのも確かだ。よくまあ、厭きもせずネズミの虐待を続けたなあ・・・という感想だったかも知れない。
最近読んだ本で「生物は重力が進化させた(西原克成著 講談社ブルーバックス)」にワイスマンの事が書かれていた。 西原は言う、「ワイスマンは二重の意味で愚かだった」と書いている。 第一に、ラマルクの第二法則だけを切り離して考え、これを「獲得形質の遺伝」と位置付けてそれを否定した事を述べ、その証拠となるこのネズミの尻尾を切る実験自体が誤りであると述べる。 ネズミにとって尾を切られる事は獲得形質でもなくただの怪我である。ラマルクの用不用の説とも何の関係もない。いきなり降りかかってくる災難である。局所の細胞の遺伝子が発現する暇もないあっという間の突発事故である。つまり、そもそもネズミは尾が短いという形質を獲得していないのである。この獲得していないものが次代に伝わるはずがない。 この愚かな実験の誤りを見抜けなかった為に進化の学問は100年を棒に振った。
僕自身違和感を持ってはいても、西原の言うようにはっきりした誤りと見抜いていなかった。 教科書にも書かれ、あたかも真実のように吹き込まれてしまったものに疑問を持つ事が如何に難しいかの一例でもある。 厳しい環境を生き抜き自らの姿を変えた意志する者たちの姿を沢山知っているはずの僕が漠然とした見方をしていたのだと自戒している。
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