みかんの日記
みかん



 暗い家

若い住み込みのお兄さん達やお電話のお姉さんが居て
出入りが多く賑やかな我が家だった。

しまいには父方の叔母まで住むようになった。

母はおさんどんと仕事の手伝いに明け暮れ
父と語らう時間もなくなり
父は接待で外に行く時間が増え…

家に居ないことが多くなった。

この頃私は三歳。


不安定な家庭の状況を避けるようにか、
母方の伯父や叔母が何かと一緒に出かけて
あちこち遊びに連れていってくれたり、
祖母の家に何日も泊まりに行ったりした。


楽しいけれど
心の片隅ではいつも寂しさが冷たい固まりになって刺さっていた。


父方の親族に母が相談しても
羽振りのいい父のところに嫁に行った腹いせか
全く力にならず、
かえってお前が悪いからだと母はなじられた。


父は男の子が欲しかった。
何回も子供が出来ても
身体を大切に安静に出来ない環境で
流産、早産して死亡を何度も繰り返す。


「男の子が欲しい」と父が願うことは
子供ながらに
自分は望まれていないという劣等感、絶望感を
常に感じていた。

お前が一番。
一番大切。


父からそう言われることがどれだけ自分が望んでいた事か。

2010年05月04日(火)
初日 最新 目次 MAIL


My追加