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2003年07月12日(土) 歌いながら/fountains of wayne"WELCOME INTERSTATE MANAGERS"

また今年も夏がやってきた。そして、2003年のこの夏に、ファウンテインズ・オブ・ウェインは、時が巡っても永遠に変わらない恋と切なさを連れて帰ってきた。この目も当てられないような世界に。変わらないこんな素晴らしいバンドがアメリカにいる。

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6月まで、俺や仲間にマス・コミュニケーションとは何かを叩き込むために教育係が付いていた。時に厳しく、時に優しい人。条理も不条理も引き連れたこの世界を叩き教えてくれた、大ベテラン。7月からは一人立ちっていう訳ではないけれど、彼から卒業した。その彼がつい先日、解散式を開いてくれた。

都内屈指の中国料理の高級店でありもしないような料理を食べた後、カラオケに行った。そこでは歌いまくったなー。カラオケなんてここ何ヶ月か行ってなかったから、めちゃくちゃ気持ち良かった。ぜんぜん今の歌は歌えないけどね。空っぽの青春パンクや、金の匂いに塗れた民謡なんて歌いたくも無いし。

なんか大きな決意がそうさせたんだろうか、次の段階に進む不安と期待が表出したんだろうか、選曲がみんな名曲。イノセント・ワールドや30じゃないけど、イージューライダーは本当に良い曲だね。教育係の彼は「『歌は世につれ、世は歌につれ』っていうけれど、素晴らしい歌っていうのは何も変わらないね」と感動してくれてた。

そう、そうなんです。

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"彼は携帯電話の爆発で死んだ/遺灰は海にまかれ/海水はベビー・ローションの原料になった/そして商業主義の歯車が回り始めた""それでも夏には太陽が輝く/僕は君のもの 君が僕のものになるならね/変わろうと努力したさ けど気が変わったんだ/メキシカン・ワインをもう一杯もらおう"

1曲目の"メキシカン・ワイン"でFOWがポップ・メロディの魔法に乗せて力強く宣言するのは、そういうことだ。全部詰まってると思うな、この数行で。何も変わらない人間模様っていうのが。

変わり続ける世界の景色の中で、絶対に色褪せることがないのはメロディであり、根本的な想いと決意を描いた言葉だ。FOWの3rd、この「ウェルカム・インターステイト・マネージャーズ」はそれを証明しきっている。

1st、2ndから見抜けることだったけれど、この3rdはもうはっきりとパワーポップの域を軽く飛び越えてる。そしてそれと同時に、ほとんどの最高と言われている現在のポップ、ロック・アーティストを追い抜いてしまった。ノエル・ギャラガーよりも、リヴァース・クオモよりも、このFOWのニ大ソングライター、アダム・シュレシンジャーとクリス・コリングウッドは優れている。そう言わざるをえないな。

#1の一曲の時点で、数多のパワーポップバンドは蹴散らされる。切なさのコードに乗せて歌われる、痩身の泣き虫男の決意。そしてアメリカの広い広い青空に解き放たれるギターソロ。窓から星空を眺めながらの子守唄。OK、号泣。

#6は、なんかチューリップやオフコースを思い起こさせる透き通ったカントリー・ソング。前向きになることの大切さ。そうなれない思いの悲しさ。でもだんだんと季節は夏に近づいていくこと。

#8、#14、#15はこう鳴らしてくれよ、オエイシス、リアム、こう歌ってくれよという願いなのか? 圧倒的なオアシス・ロック。これは……、本当に素晴らしい。と言うしかないな。これをオアシスが歌ったら、世の中はもっと変わるかな。メロディも、轟音も、全てがあの右上向きの矢印を思い起こさせる。

#9はミスターチルドレンの"雨のち晴れ"のような小粋でちょっとおセンチな歌。こういうのが沁みるようになったらいけないのかな。

#10、#12はポール・マッカートニーなのだろう。ギュッと胸が締め付けられる思い出の歌。懐メロ。

#13は軽くアイロニーを込めながら、でもだからこそ強く響く平和への唄。恋人や家族、友達と過ごす日常を大事にしようという大命題を、口笛のような気楽な歌に乗せて。

締めの#16(日本盤ボーナス・トラックでは、そのあとに理想的なオアシスソングが続くけれど)。子供が眠りについた後、絵本が優しく閉じられるようなアコースティック・ソング。君と僕の部屋で過ごす時間が一番素晴らしい瞬間。そういうこと。

ファウンテインズ・オブ・ウェインは、君が人を信じられなくなったならば、世の中が嫌になったならば、何かに破れて途方に暮れているならば、絶望と希望を行き来する日常に疲れているならば、絶対に聴いて欲しいアーティストだ。そして、この3rdを真っ先に手に取って、CDプレーヤーに放り込んでほしい。泣いているのは君だけじゃない。でも、君も前を見て、人を愛していかなければならないよって教えてくれる。

さあさあ、ようこそ、俺らの日常を蹂躙してくるお偉いさん方。でも、俺らは変わりたくない。変わらない。そう言って、笑いながら、歌いながら。


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