夏になると。あたしは毎年思い出すことがある。
そうると出会ってから。たくさんの思い出ができて。 季節が巡るたびに。いくつもの記憶が呼び起こされる。
そんな中でも。夏の思い出はちょっと特別で。 あたしにとっては。トップシークレットでもある。 誰にも話せない。そうるとあたしだけの思い出。
もっとも。そうるは忘れてる可能性が高いけど(苦笑)。
2回生の夏。サークルの同学年の仲間で行ったキャンプ。 川で遊んで。バーベキューをして。花火もして。 夜にはみんなでお酒を飲みまくって。ほんまに楽しかった。 ありえへんぐらい笑って。ありえへんぐらいはしゃいだ。
でもあたしは。そんな楽しかった記憶より鮮明な記憶がある。 どうしたって忘れられん。3年たった今でも忘れられん。
あんなことになるなんて思ってなかった。 ただそうるが好きで。くっついてただけやった。 でも。お酒のチカラで。酔ってたせいもあって。 そうるがあたしを求めて。あたしがそれに応えた。
酔ってたはずやのに。あたしは一部始終を覚えてる。 未だかつて。あんなにドキドキさせられたことがあったやろうか。 そして。あんな幸せの中に身を置いたことがあったやろうか。 それぐらい。あたしにとっては強烈な体験やった。
挑発的なそうるの視線。欲情した眼差し。 射抜かれたように。あたしは動けんくなってた。 抱き締められたいと思った次の瞬間。抱き締められてた。 息が止まるかと思った。でもあの瞬間は死んでもいいと思ってた。
愛がなんだか分からんかったけど。幸せやった。 まだ愛の痛みも苦しみも知らんかったけど。幸せやった。 1度抱かれただけで。愛されてるんやと勝手に思ってた。 そして自分のそうるへの感情も。永遠やと信じて疑わんかった。
夏が巡るたびに。そんな自分を思い出してちょっと感傷的になる。
ねぇそうる。あんたはどれぐらい覚えてるか分からん。 でもあたしは。今でも忘れることができん。 あんたがお酒の勢いでやったことやとしても。 あたしは。今でもその記憶に浸って簡単に溺れる。
あんたの言葉ひとつひとつを覚えてる。 抱き締める腕の強さも。触れる指先の温度も。全部覚えてる。 だって幸せやったから。嬉しかったから。愛しかったから。
ねぇそうる。あんたの中にも。そーゆうあたしの記憶があるかな。 あたしのしたこと。言ったこと。その一部始終。 あんたに刻み込まれてるような場面があるかな。
ねぇそうる。あんたはそーゆうのを暖めるタイプの人間じゃないけど。 ひとつでいい。あんたの中に忘れられないあたしがいるといい。 あんたの記憶の中で。あたしも生き続けていられるといい。
季節が巡るたび。鮮明に思い出されるあたしがいるといい。
↑「特別」なので。時間かけて大事に書きたいから・・・。 |