幼い頃。あたしは時々思い描いてた。 自分が大人になったら。どんな女性になるか。 かわいい花嫁さん。かっちょいいキャリアウーマン。 いっそのこと自由な芸術家でもいいかな。 そうやって想像するのが好きなおませさんやった。
どんな道を選ぶにせよ。キレイでスマートで。かしこい大人になりたかった。
長い髪を揺らして。ヒールの靴を履きこなして。 姿勢よく颯爽と歩く女の人が理想やった。 やりたい仕事をバリバリこなして。金銭的にも余裕があって。 趣味だって充実してて。休みの日は思いっきり遊んでて。 そばにはかっちょいい恋人がいるような。そんな大人に憧れてた。
今のあたし。24歳。 幼い頃には夢物語だった世界に。 気づけば身を置いて。生きてる。
長い髪が定着した。ヒールの靴にも慣れた。 それなりに仕事をして。お金もそこそこ持ってる。 休日には集まるサークル仲間がいて。思いっきり遊んでる。 これっていう趣味は今探し中やけど。それも悪くないと思う。
かっちょいい恋人。・・・あたしはここでふと考える。
今のあたしの恋愛は。幼い頃のあたしには想定外やった。 それ以外は。多少なりとも想像できた未来やと思うけど。 そうると出会って。そうるを愛することは。 幼いあたしには全く考えられんかったことやと思う。
こんなにも愛しい人ができた。 こんなにもかっちょいい人やった。 でもその人は。予想してた男の人じゃなかった。
出会った。話してて楽しかった。 興味を持った。もっと仲良くなりたいと思った。 さらに時間を過ごすうちに。一緒にいるのが居心地よくなった。 もっと自分のことを知ってほしいと思うようになった。 自分以外の人と接してるとヤキモチを焼くようになった。
好きだと伝えた。そしたら好きだと言われた。 だから一緒にいろんなことやいろんな思いを共有してきた。
ただそれだけのこと。男とか女とか関係ない。 男じゃないと出来なかったこととか。女じゃないとダメだったこととか。 ゼロだったとは言わないけど。でもそのすべてたいしたことじゃない。 性別は関係ない。あたしは「人間」を好きになったんだ。
でも声を大にして言えば言うほど。自分に言い聞かせてるような気がする。 たぶん誰よりもあたしが。その答えに自信がない。
だってこの世は。あまりにもそんな2人に厳しい。 男と女が仲良く手を取り合って生きていく姿が。 長い歴史の中で一般的とされてきたんだから。 仕方ないと言われればそれまでのことだと思う。
胸を張って言えない。そうるを愛しい人だと公言できない。 そんな自分に腹が立つ。あたしは所詮弱虫でしかない。
ねぇそうる。平気そうに大好きって笑いながらも。 内面はこんなにもドロドロしてるあたしに。 あんたはいつから気づいてたんやろう。 あたしがこうやって考えて苦しんで。とことん底なし沼に落ちていく前に。 もう終わりにしようかって言い出すこと。いつから決めてたんやろう。
ねぇそうる。あんたのその気持ちを思うと。 あたしは嬉しさと腹立たしさとでぐちゃぐちゃになる。 苦しみから逃そうとしてくれるんだと思うと嬉しくて泣ける。 でも一緒に苦しみに落ちてくれないのかと思うと腹立たしくて泣ける。
別れたくない。別れたくなんかないよ。 そんな分かりきったこと。今さら聞かないでよ。 でもこの先の人生。あたしはこのままでいいのかな。 あんたとどこまでも。手をつないでいけるのかな。 その前に。手をつないでいってもいいのかな。
ごめんねそうる。あたしがこんなんだからいけないんだ。 あたしがこんなんだから。あんたも不安になるんだ。 どうしてもっと。自分の生き方に自信を持てないんだろう。 人がどう言おうが。世間がどう見ようが。関係ないのに。 なんであたしはこんなにも。周囲や環境に影響されるんだろう。
自分がどうしたいのかは確実に分かってたはずやのに。 愛してる。別れたくない。それは間違いなく真実やのに。 どうするべきかを考えるうちに。どうしたいのかも曖昧になってくる。 付き合い続けていいか悩むうちに。付き合い続けていきたいかもぼやけてくる。
なんなんだ。こんなの。あたし本来の思考じゃない。 ↑だってそうるは教えてくれた。物はすべて自分の考え方次第って。 |