【シュークリーム作成日誌】

2002年08月17日(土) SSS#20「来須→瀬戸口→速水」

[SUNNY DAYS]




愛らしい声に、呼ばれている。

「瀬戸口先輩!」

振り向けば、天使のような微笑みの可愛らしい少年。
暖かい眼差しにウインクで返すと、少年は照れたように頬を染めて下を向いた。
そして、恥じらいながら提案。

「あの…一緒に仕事しませんか?」

この世にこれ以上可愛いものが存在するだろうか。
そのぐらい強烈に可愛らしい笑顔でなされた速水の提案に、瀬戸口はたちまち幸福状態になる。
そのシアワセ真っ只中状態で、可愛い親友の方へと歩き出そうとする瀬戸口の身体が浮いた。前に進まなくなる。

「???」

身体を捻って肩越しに背後を見る。
白い物。
速水が目を円くしている。
自分を止めている者の正体を悟り、瀬戸口の目がきりっと吊り上った。

「…来須」

名を呼ぶ声は、普段より1オクターブ低い。

「何のつもりだ。手を離せ」

腰に屈強な腕が巻きつき、床につま先が付く程度に持ち上げられている瀬戸口は、だがみっともなくじたばたする事を嫌って極低温の視線で来須を一突きする。
来須の回答は簡潔を極めた。

「訓練をするぞ」
「は?」

瀬戸口の答えを待たず、来須は彼を抱えたまま歩き出した。バランスを崩してひっくり返りそうになり、瀬戸口は慌てて(不本意ながら)来須の肩に掴まる。

「待て…!降ろせって!!」
「……」
「聞いてるのか!」

とうとう暴れ出した瀬戸口をいとも容易く押さえ込み、来須は彼の両足を一括りに抱えて肩の上に担ぎ上げた。
上半身を来須の肩越しに、後ろ向きに乗り出す格好になった瀬戸口の視界に映るもの。
それは只でさえ大きな瞳をよりいっそう大きく見開いてこちらを見つめている速水の姿だった。

「…瀬戸口先輩。来須先輩と物凄く仲良かったんですね。僕、知らなかった…」
「あっちゃん!これは違うんだ。つまり…その…。
 ええい!降ろせって言ってるのが聞こえんのか!来須!!」
「……」
「何とか言え!黙ってちゃ判らんだろうが!!」

怒り心頭に達している瀬戸口に構わず、歩き続ける来須。
やがて速水が見守る中、瀬戸口はどこかへと運搬されていった。
ぽつんとひとり残された速水。

「…瀬戸口先輩…。持ってかれちゃった…」
「ふふ…銀河は、焼もち妬きなのデス」
「ぅわ!?」

突然の背後からの声にびっくりして飛び上がる。
振り返れば、陽だまりのように優しく微笑む背の高い女性の姿。

「よ、ヨーコさん…」
「ゴメンナサイ、速水サン。銀河、あなたに嫉妬したのネ。
 ホントはいい子。仲良くしてあげて欲しいデス」
「はあ…」
「銀河、あなたの事も大好きネ。
 でも、一番好きなのは、瀬戸口サンなのデス」
「は…なるほど!!」

速水はようやく合点が行ったように、片手のこぶしでポンともう片方の手のひらを叩いた。

「僕の知らないうちに瀬戸口先輩と来須先輩、付き合ってたんですね!」
「みんな仲良くが一番デスv」
「うん!先輩たちが恋人同士でもなんでも、僕にとってはふたりとも大事な親友だもん。
 ずっと仲良くします!!」

速水の言葉に、にっこりと太陽のように暖かく微笑むヨーコ。
それに負けないくらいの明るい笑顔で、向日葵のように微笑む速水。



瀬戸口はまだ速水が恐ろしい誤解をしてくれた事を知らない。
彼は今、嫌々ながら来須と共に体力の訓練をしている。しかし、嫌々ながらとはいえ、今の彼はすべてを知らないがゆえに、幸せであると言えよう。
瀬戸口がショックのあまり教室の床に撃沈した後、速水に取り縋って泣きながら自分の身の潔白を釈明するのは翌朝以降の出来事である。



Fin
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やはり瀬戸口は不幸なのか!?これはもうお約束なのか!!?
…まあそれはともかく(笑)
初めてヨーコさん書きました。喋り方が難しいです。物凄く違和感。


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