2002年09月29日(日) |
SSS#25「瀬戸口×速水 ラブラブ」 |
誰も気付かないかもしれませんが(笑)日記のタイトル変えてみました。
今日、うっかり009を見てしまいました。 昔も今も殆ど見たことなかったのですが、私はどうやら大きな勘違いをしていたようです。 私は009(主人公)がヒーローで、003(紅一点)がヒロインなんだと思い込んでいたのですが…。
違いました。 今日の放送を見る限り。
009(主人公)がヒロインで 002(最速)がヒーローでした。
衝撃の事実。 ラスボス(?)との戦い(in宇宙)で大気圏外に放り出された009を救うために002がひとり追いかけるのですが。 002正直カッコ良かったです。惚れそうです。スタリオン(幻水)に似てるとか思っていた自分を心から反省しました。
ていうか。ほんとに彼らが心中(違)して終わりなんですか?あれ、最終回じゃないですよね? あんな大きなお嬢ちゃんたちが喜びそうなラストでいいんでしょうか。 いいのか。(納得するな) なにかサイボーグ009を大幅に勘違いしたまま、私の人生は進んでいきそうです。
009は置いておいて、ここはガンパレサイトです(笑) ここで小話をひとつ。
【The Secret SweetHeart】
「あーあ。彼女の手作り弁当が欲しいよなあ」
ぼやきながら、親友は購買のヤキソバパンに齧りついた。 そんな彼をぽやんとした笑顔で見遣り、速水は笑ってサンドイッチを一切れ差し出す。
「まだ諦めてなかったんだ」 「お前…そりゃひでーよ」
柔らかい声音で言われた、存外厳しい言葉に滝川はぐったりと机に頭を沈めた。 でもしっかりサンドイッチは受け取る。 もそもそと食べると、卵とマヨネーズの絶妙な旨味が口の中に広がった。
「お前が女ならなあ…」
あまり冗談でも無さそうな目付きでそう言われ、速水は冗談と流しつつも身体を退く。 滝川は再び机に突っ伏した。
「ほんとに彼女欲しいなあ」 「そう言う割に、滝川ってあまり女の子と話しないよねえ」
くすくすと笑いを零しながら、速水は次のサンドイッチを口に運んだ。 滝川はそんな速水を恨めしそうに見上げる。
「どーせ俺は、お前みたいに女と仲良くねえよ。 でもさ、うちの小隊の女ってアクが強すぎねえか? やっぱ…女子高の子とかさあ」
夢見がちに自分達とは少々距離のある女の子たちの話をする滝川に、速水は本当に親友が彼女を欲しがっているのだろうかと疑った。恋に恋する、というわけでもあるまいが、滝川は存外「彼女が欲しい」と口にする事それ自体を楽しんでいるのかもしれない。
「お前は彼女欲しくねえの?」
突然こちらに振られて吃驚する。
「僕は…そんなに切実には…」
ぽやーっとたんぽぽの綿毛のようなふわふわした笑顔で答えられ、滝川は心底脱力したようだった。
「付き合いわりーな」 「うーん」
困ったように微笑む少年を眺めつつ、滝川の手が次のパンの袋を破った。 ばり。という音と共に、合成バターの香りが辺りに広がる。
「そういえば最近師匠もなあ…」 「!…瀬戸口さんがどうかした?」
口に運びかけたサンドイッチを下ろし、速水は大きな空色の瞳を発言者に向ける。 滝川は彼の顔を見ず、パンの中から合成とうもろこしを除去する作業に真剣だった。
「あんまり女の子といないよなあ。 前は暇さえあれば女の子と話してたし、デートに行くんだって消えるのなんて しょっちゅうだったのに」 「……」 「こないだもさ、女の子にラブレター貰ってて…わっ!」
速水が握り締めたパックから噴水のように紅茶が飛び出し、滝川は言葉を切る。 幸い被害は大した物ではなく、机の上に小さな池が出来たぐらいだった。
「ごめん。…それで?」
速水は雑巾でそれを拭いながら、先を促がす。 滝川は、何となく速水の目付きが怖いと思いながらも、それに気付かぬ振りをした。
「ああ。師匠がラブレター貰ってたんだけど。 驚くなよ。突き返してたんだよ!」 「突き返し…てたの?」 「あ、いや…。言い方悪かったな。 突き返すっていうか…とにかく受け取り拒否してたんだ。 なんか謝ってるみたいだったけど」 「…そう」 「すげー可愛い女の子でさ。 こう…髪が長くて、清楚っていうか、人形みたいっていうか。 とにかくほんと可愛かったのに、勿体無いよなあ」 「そう…だね」 「俺なら即OKなのにな…。 師匠って別に特別に彼女がいるわけでもないみたいなのに、 どうして断ったのかな。 あ!ひょっとして特別に好きなヤツが出来たとか、そういうことかな!?」 「!」
滝川の言葉に、速水はびくっと肩を震わせる。 とうもろこしを纏めてビニール袋に入れ終えた滝川は、そんな速水の様子に驚いて顔を上げた。
「速水…どうした?なんか、顔赤いけど。具合でも悪いのか?」 「な、なんでもないよ! あ。僕、雑巾洗って来るから、適当に食べてて。じゃあ」 「おい、速水ー?」
ばたばたと教室から出て行く速水を見送って、滝川は首を傾げた。
***
「瀬戸口さん!」
指揮車の中で珍しく整備作業に励んでいた瀬戸口は、愛らしい声に呼ばれインカムを外した。 車のドアが外側から開き、ふわふわの髪が覗く。
「厚志か。どうした?」 「あのね。今日一緒に帰らない?」 「珍しいな。OK、すぐに片付ける」
いつも深夜まで仕事をしている速水と一緒に帰れる機会は稀で、瀬戸口は喜んで提案を受け入れた。 指揮車から下り立つと、小柄な速水が瀬戸口を見上げてくる。
「待たせたな。じゃあ帰ろうか」
優しい声で促がすと、速水はほんのり頬を染めてこっくりと頷いた。
昼間あった出来事、ニュースの事、見たい映画の事。 ほんとうにどうでもいいような事を話しながら帰る道のりは、なぜかとても楽しかった。 話題が一瞬途切れた時に、速水が瀬戸口を見上げる。
「瀬戸口さん…あの………手、つないでもいい?」
消え入りそうな、声。 でも瀬戸口の耳にははっきりと届く、声。 瀬戸口は返事をする代わりに手を伸ばし、細い指に自分の指を絡める。 引き寄せて、歩き出す。 暖かい手のひら。 コンパスの分、速水が少し遅れる。 それに気付いて、瀬戸口は歩調を緩めた。
「瀬戸口さん、ラブレター受け取らなかったんだって?」
揶うような口調を装った問いに、瀬戸口は苦笑する。
「仕方がないだろう。好きな奴がいるのに、受け取れないじゃないか」 「好きな人…」 「そ。一番大好きで大事で愛してる人」 「…だれ?」 「だれだろうねえ」
瀬戸口はとぼけて空を見上げる。 速水は微笑んでそんな彼に寄りかかった。 歩き難いだろうと苦情を言う青年の声は、けれど極上に甘い。
最初から完敗なんだから、せめて告白ぐらいはと。 瀬戸口はこの恋を秘密にする。 でもいつまで耐えられるのだろうか、俺は。 柔らかな小さい手のひらの感触と、甘い髪の香りに眩暈がする。 そんな彼を嘲笑するように、ふたつの月は晧々と夜空に冴え渡っていた…。
Fin ―――――――――――――――――――――――――――――――――― これで恋人未満だというから始末に終えない。 ラブラブバカップル、ここに極まる。
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