【シュークリーム作成日誌】

2002年10月03日(木) SSS#27「瀬戸口×速水 恋人未満・明るい雰囲気」

【Give and Take】





「師匠〜、女の子にもてる方法教えてくださいよ!」
「いいぜ。貸し1だな」

毎度聞きなれた滝川と瀬戸口との会話を聞きながら、速水はふと思った。

(貸し1ねえ…。
 そういえば茜が森さんの秘密を教えてもらってたときも、『貸し1』って
 言われてたっけ。口癖なのかな)

「速水ー、お前も一緒に聞けよ。
 特別講義だってよ」

嬉しそうな滝川の声に苦笑する。
速水と視線が合うと、瀬戸口はにっこりと優しそうに微笑んだ。

「……」

思わず赤面してしまう。
目を逸らした速水の方へと、瀬戸口は笑顔のままで近寄ってきた。

「どうした?ほら、愛の伝道師の匠の技を特別にレクチャーしてやるぞ」
「僕はいいってば。
 そうだ。それより…瀬戸口さん」
「ん?」
「後で仕事付き合ってくれないかな。
 誘導技能が欲しいんだけど、上手くいかなくて」
「可愛い俺のバンビちゃんの頼みを断れないが…タダって訳にもいかないな」

(貸し1って言われるのかな?)

黒目がちな目を向ける速水に、瀬戸口は悪戯っ子のような笑顔になる。

「キス30回でどうだ?」
「………はぁ!?」

大きな目をまんまるに見開いて、速水は素っ頓狂な叫び声を上げた。

「何それ!なんで僕の時だけそんな…。
 っていうか、何その数!」
「ははは、いい提案だろv」
「どこが!僕、嫌だからね!!」
「誘導技能欲しいんじゃなかったのかい?」
「ぐ…」

思わず言葉に詰まって拳を握り締める。
その前に立つ男は、飽くまでも爽やかに笑っていた。

「じゃ、1回前払いだな。さ、どうぞ」
「ま、前払いって…」
「初回ってことでほっぺにちゅうに負けておいてやるぞ」

身を屈めて、はい、と頬を寄せる青年に、速水は口をへの字にする。
動く気配のない彼に、瀬戸口はぱちりと片目を瞑ってみせた。

「ほっぺちゅーも出来ない?やっぱりお子様だねえ」
「な!僕だってそれぐらい出来るよ!!」
「なら、どうぞ?」
「……」

新進気鋭のエースパイロットでもやっぱりお子様らしく、瀬戸口の誘導にあっさり引っ掛る。
いや、もしかしたら、これこそが誘導技能の真骨頂なのかもしれない。
引っ込みがつかなくなった速水は、瀬戸口の方へと顔を近づけ…。

かぷり。

「…っ!?」

今度は瀬戸口が目を見開く番だった。
首すじにぱくっと噛み付いた速水は、パッと離れて得意げに笑う。

「えへへ、びっくりしたでしょ。
 あんまり僕の事からかってばかりいるから、お仕置きだよ」
「……」
「前払いしたからね。放課後になったら、ちゃんと教えてね。約束だよ」

出会ってより一ヶ月。初めて瀬戸口を負かした速水はご機嫌で去っていく。
瀬戸口は中腰になったまま固まり、首だけを動かしてその後ろ姿を見送った。

(…速水。「噛み付く」ってキスよりも色んな意味でヤラシイんだが…。
 あの様子じゃ判ってなさそうだな…)

滝川は、不幸にも一連の出来事をすべて目撃してしまった。
彼は基本的には善良な少年で、しかも色事の師匠である瀬戸口を尊敬してもいたので、瀬戸口がなぜか微妙に腰を引いたまま動けずにいる理由をわざわざ追求したりはしなかったのである。






Fin

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ぽややんでも最強。それがあっちゃん。
基本的には大人だけど、あっちゃんには勝てない。それが瀬戸口さん。








いよいよ明日があっちゃんの誕生日です。
もはや決定的に間に合わなさそうなので、こうなったら納得のいく物にしようと思います。週末にアップ出来ましたらご喝采☆


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