2002年11月10日(日) |
SSS#33「瀬戸口→水色速水 ギャグ3」 |
テストは適当に一夜漬け&やっつけ仕事。 全国順位が見ものです(笑) そして帰ってきて、速攻でSSS書いてるんだから…どうしたらいいんでしょうねえ。
【瀬戸口隆之受難の日 3】
「たかちゃんしっかりして!」
全員が嫌そうに視線を逸らす中、瀬戸口に駆け寄ったのは心優しい少女ひとりだけであった。 小さな両手で瀬戸口の頭を持ち上げ、大きな瞳に涙を溜めて覗き込む。
「たかちゃん…ののみがたすけてあげるから、だいじょうぶなのよ…」 「東原さん、助けると言いましても…そんな潰れたもの(惨)をどうしようというのですか?」 「へいきなのよ、いいんちょう。ののみしってるの。ここからくうきをいれればもとにもどるの!」
ののみは涙を拭って、健気ににっこりと微笑んでみせる。そして、小さな指で瀬戸口の形良い唇を指差した。 善行は眼鏡を押し上げ、表情を隠す。
「瀬戸口君は空気人形じゃないのですが…。 まあそれはいいにしても、出来れば瀬戸口君が犯罪者として逮捕されないような手段で 空気を入れて欲しいですね。 私が司令を勤める間に小隊に、幼女趣味の変態がいるという噂が立つのは避けたい のですが…」 「ようじょしゅみってなんですか?」 「気にしなくてよろしい。ただ人工呼吸は勘弁してやって欲しいのです」 「うん!だいじょうぶなの!ののみ、これもってるのよ」
と少女が満面の笑みと共に取り出だしたるは、自転車の空気入れだった。 愛らしい童女がそれを小さな手で一生懸命瀬戸口の口に固定している。 …ガムテープで。 善行は無言で目を逸らした。
そんな惨状を他所に、ラブラブバカップルはめくるめくふたりの世界を展開させていた。
「勝吏さん…あのね。僕、お願いがあるんだけれど…」 「なんだ?可愛い厚志の頼みなら、何でも聞いてやるぞ」 「あはっv嬉しいな。あのね、僕今日雑誌で、すっごく素敵な教会を見たんです。 それで、それで…」 「結婚式はそういう所でしたいというのか?」
ストレートな準竜師の問い掛けに、速水は顔を真っ赤にしてコクリと頷く。 小隊員たちの何人かが、絶望のあまり貧血を起こして倒れた。 準竜師のグローブの如き手が、速水のふんわりした頬を撫でる。
「では、今日はその教会へ下見に行くとしようか」 「ほんとですか!僕…凄く嬉しい…」
速水は泣きそうな顔をして、大きな瞳を潤ませて男を見上げる。 その場にいた全員が、少年の背後に咲き乱れるお花畑を幻視した。 いや、全員ではない。 瀬戸口は本当の意味でお花畑に行きかけていたし、ののみはそんな瀬戸口の救出に懸命だった。
少女が顔を真っ赤にして空気入れを押す、バシュッバシュッという音が響く。 その努力の甲斐あって、やがてそれにドシンバタンとなにやら暴れるような音が混じり始めた。 どうやら限界以上に空気を入れられた瀬戸口が、のた打ち回っているらしい。 でも誰も止めてくれない。日頃の行いのせいだろうか。
「もういいだろう…」
しかし、天は瀬戸口を見放さなかった。 潰してしまった事に多少の責任を感じているのか、寡黙なスカウトがののみの肩を押さえ、ゆっくりと首を振った。
「ふえ…?」 「もとに戻った」 「たかちゃん、たすかったの?」 「ああ………多分(←無責任)」 「わあvよかったのね、たかちゃんw」
ののみは大喜びで自転車の空気入れを放り出し、白目を剥いてマグロのように転がっている瀬戸口に抱きついた。 間もなく、ベリリッ!といういかにも痛そうな音と共に、断末魔の悲鳴があがる。 善行は聴こえないふりをした。
つづく
という方はどうぞスイッチを。
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