【シュークリーム作成日誌】

2002年12月10日(火) SSS#38「瀬戸口×速水。大人風味」

絶対一週間じゃ書きあがらないだろうなあと思っていた「黒つぐみ」の後編。予想どおりまだ2/3ぐらいしか出来上がっていません。前編と同じぐらいの長丁場です。
今週末の更新を予定しておりますが、はて、どうなるでしょうね(笑)

更新してなくて寂しいので、短いですがお話をひとつ。













夜中に目が覚める。その事が、とても怖かった。




[a sleeping pill]




目が覚める、ということは何かの気配に気付いたということ。
だから、夜中に目が覚めたら逃げなくてはならない。
『敵』から。
それは化物に怯え、それを退治しようとする人間だったり、裏切りを責める同胞だったりした。
夜中に目が覚めるのが、瀬戸口は怖かった。





午前3時。
薄紫の猫の目が暗闇に光る。

(真夜中に目を覚ましてしまった)

眠りの浅い自分を悔やみつつ、瀬戸口は身を起こそうとする。
と、小さな唸り声がした。子猫のような、声。

(…そうだった)

ここは荒野でも森でもなかった。
速水の家の、速水の寝室の、速水のベッドの中。
逃げる必要は無い。
カーテンの隙間から月光が差し込んでいる。
傍らに目を向けると、濡羽色の髪が濡れたように輝いていた。
ほんのりと上気した、白い頬。
瀬戸口が動いたせいでずれてしまった布団からのぞく、艶やかな肩が月の明りを白く反射している。

夜の中も、君がいるなら。

夢ではないという証拠に、そっと覆い被さりキスをした。
熟睡していた速水は、迷惑そうに小さく身動きする。
唇に、瞼に、頬に、耳に、首筋に。
何度も何度もキスをしているうちに、速水はとうとう目を覚ましてしまった。

「せと……?なにして…」
「うん。いいから」
「いやぁ……ねむいよう……」
「ん、寝てて良いから…」

自分でも無茶な事を言っているなと可笑しくなる。
眠気を振り払おうとしているのか、瀬戸口を振り払おうとしているのか。
半分眠りながらもわたわたと手足を動かす速水が、とても可愛らしい。
顔を覗き込んだら、睡眠を邪魔され不機嫌らしく、嫌そうな顔で瀬戸口を見返してくる。
他の人間は知らないだろうが、速水の嫌そうな顔というのはそれはそれは……いいのだ。
そんな事を考えている事が知れたら、恐らくグーで殴られるだろう。
瀬戸口は速水の表情に見惚れつつも、手の動きは緩めない。

「んっ、やだ…今日はもう…寝る…」
「寝てて良いってば」
「ならやめてよ…こんな…寝られるわけ……ふぁ………あ…ん……」

腕の中の小さな生き物が、だんだん熱を帯びてくる。

「熱…っ…」

その熱が、心もこの身も暖める。
夜の中、ふたりで。掠れた声も、夜に溶けて。


***


細く窓を開けて煙草の煙を逃がしながら、瀬戸口は白む夜明けを眺めていた。
ベッドの中の恋人に語りかける。

「夜中に目が覚めるのが、怖くてさ…。
 でも厚志と一緒に寝るようになってから、平気になった」
「へえ…そう。僕は君が夜中に目を覚ますのが怖くなったよ…」
「怖いくらいに気持ち良かったとか…?」
「バカ!…もう、今日は誰かのせいで極楽トンボ章決定だよ…」
「朝になってもまだ腰が立たないだろうからなあ」
「いちいち言うな!瀬戸口の変態!!」

可愛い外見のくせに存外口が悪いと、瀬戸口はこっそり笑う。
真夜中はもう怖くない。
君といれば、暗闇の中も走り抜けられる。




Fin
―――――――――――――――――――――――――――――――――

瀬戸口に無理矢理起されて嫌がるあっちゃんが書きたかっただけです。
ええと…可愛い子が嫌がる姿ってちょっといいですよねv(変態)


↑という方はスイッチをどうぞ☆


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