2003年01月29日(水) |
SSS#42「瀬戸口 コネタ」 |
【的確な人事についての考察】
善行がそれを見たのは、放課後の事。 若宮を探してグランドへと移動中の出来事だった。
ズッバァァァァアン!!
それは、思わず善行が足を止めたほどの、切れのある音だった。
ズドムッ! ギシッ… ズバァァン!
誰かが、サンドバックを殴っている。 若宮や来須の訓練になら、善行も何度か付き合ったことがあった。 歴戦の彼らがサンドバックを叩く音は、まるで砂鉄の詰まった皮袋を鞭で思い切り殴るような鋭い音がしたものだった。 しかし、今の音は、彼らのものより数段力強かった。
「一体誰が…」
その実力如何によっては、スカウトに新たな人材を用いるのも悪くないかもしれない。 常に小隊の戦力増強を考えている司令官は、伊達眼鏡を白く光らせながら鉄棒の彼方へと視線を走らせた。 そして…ぽかんと口を開けた。 手から書類がばさばさと落ちて風に吹き飛ばされる。 そんな事に構っていられないほど、善行の驚愕は深刻だった。
「にゃんっ!」
ダムッ!
「にゃにゃっ!!」
ズバンッ!!
サンドバックに何度も猫パンチを食らわせ、熱心に体力の訓練をしているのは…ブータだった。
「…ぶ、ブータが訓練を…。 猫にすら危機感を覚えさせる…この小隊って一体…」
一瞬遠い目をした善行が、ブータを見る。 見る。 よく見てみる。 その時、参考のためと気紛れに垣間見たパラメーターのために、ひとりの男の運命が変わった。
ブータ:体力 2300
善行の中で、何かが崩れ落ちた。
***
「おはようございます。朝早くからすみません。 ブータ君は今日から、スカウトで働いてください」
「ナーゴ」
「そして…来須君を無職にするのはあまりにも勿体無いですからね。 来須君は今後、オペレーターで働いてください」
「……」
「教室に戻って構いませんよ」
ブータはピンとしっぽを立てて、来須は終始無言のままで、司令室を出て行く。 後に残された善行は、満足げにインスタントのコーヒーをそっと啜り…。
「待て」
「?」
「俺は?」
ああ…と、善行はカップを机に置いて、ポンと手を打ち合わせた。 瀬戸口の刺すような眼差しからさり気なく視線を逸らす。
「すっかり忘れてましたよ。瀬戸口君が押し出し無職になってしまうのでしたね。 いつもボンクラ気味な貴方がよく気付きましたね」
「…お前が呼び出したんだろうが」
「そうでしたっけ?」
善行はゆったりと顎の下で手を組み合わせ、涼しい顔をした。
「さて…本題に入りましょう。私としても人員を遊ばせたくはないので。 猫の手も借りたい場合ですから」
「…」
「瀬戸口君は今後、小隊のマスコットとして働いてください」
「…へ?」
「以上です。どうしました?教室へ戻って構いませんよ」
「どうしましたじゃないって!何だよマスコットって!!」
「ブータの今までの職ですよ」
「知ってるって!そうじゃなくて…」
「安心してください。小隊旗もそのうち、猫マークじゃなくてたかちゃんマークしてあげましょう」
「要らんことするな!!!!」
こうして、瀬戸口の「職業:小隊マスコット」としての日々が始まったのだった…。
to be Continued? ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 続きません(笑) >小隊マスコット それにしても、ヒマそうな職ですね…。
午前3時にこんなもの書いてる私も如何な物か。 現在の多忙ぷりは来週火曜あたりで一段落の予定。次はどうなるのかな(怖)
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