【シュークリーム作成日誌】

2003年07月07日(月) SSS#51「瀬戸口×速水  ラブラブ」

【7月7日の星祭り】






世間知らずの速水は、七夕は恋人たちのための行事なのだという瀬戸口の言葉をそのまま信じていた。
なので、瀬戸口がこうして自分の家でもないのに勝手に速水の部屋に上がり込んだ挙句に、勝手にソファで寛いでいることを怒ってはいなかったし、それどころか喜んでさえいたのだ。
なにしろ瀬戸口にはたいそうたくさんの恋人がいるのに、七夕の日に一緒に過ごす相手に速水を選んでくれたのだから。
これは快挙だ。と素直な速水は思った。
嬉しくて嬉しくて、小声でハミングしながらコーヒーを淹れる。
といっても速水が知っている歌はほんの少ししかない。
今の気分に突撃行軍歌はそぐわないような気がしたので、SweetDaysを歌う。
その歌すら瀬戸口に教えてもらったものだ。
コーヒーを持って行くと、瀬戸口はにっこり笑ってありがとうを言った。
部屋の片隅には瀬戸口が持ってきた小さな笹飾りがある。
この人は一体、どこでこういうものを手に入れるのだろうか。
速水は自分のぶんのミルクティーを手に瀬戸口の向かいに座ろうとしたところを制される。
ひざの上に座れというのを、紅茶が危ないからと丁寧に辞退して自分の定位置に腰を降ろした。
けして本当のところは速水自身の身が危ないからといった理由ではない。

「速水。知ってるか?」

やがて瀬戸口がそんなことを言い出した。
速水だけが知らないことだが、瀬戸口がこんな風にもったいぶって話すことは大抵嘘である。

「笹飾りには、昔から恋人たちを幸せにする不思議な力があるって言われてるんだぞ」

『笹飾りに願いごとをすると叶うって言われてるんだぞ』なら正しい。

「そ、そうなんだ...」

速水は瀬戸口の言葉を真に受けて、ぽっと頬を染めて小さな笹飾りを見遣った。
ちなみに瀬戸口と速水は正式に恋人同士というわけではない。
速水には自分から告白するような勇気と自信はなかったし、瀬戸口は.........謎だ。
自分に片想いしている速水を見て楽しんでいるとしたら、大層趣味の悪い話ではあるが。
ともかく、何事か企んでいる瀬戸口は、ひょいとソファから立ち上がり、何を思ったか笹飾りの下に座り込んだ。
ちょいちょいと手招きする。
何の疑いもなく近づいていく、かわいそうな速水。
瀬戸口は、向かい合って座る速水の小さな手を柔らかく握り締め、極上に甘い微笑みを浮かべる。
見とれて鼓動を早くしている可愛い少年は、もはや誰かの思う壺だ。

「速水」

うっとりした声で、瀬戸口が囁く。速水以外の目には果てしなくうさんくさい。

「キス…するよ?」
「えっ!?」

ただでさえ大きな目をまんまるに見開く速水に、瀬戸口は生真面目な顔を作って片目を瞑ってみせる。

「昔から、笹飾りの下にいる可愛い子にはキスをしていい事になってるんだ」

それはクリスマスのヤドリギだと、ツッコミを入れられる人間はこの場にはいない。
瀬戸口はしなやかに腕を伸ばし、小さな顔を紅く染めてうろたえる速水のその細い肩を抱き寄せる。

「速水は嫌って言えないよ。
 この習わしでキスされる子は、断われない決まりになってるんだから…」

性悪なセリフを舌に乗せながら、瀬戸口は自然な仕草で顔を寄せ…。
くちづけかけて、窓を見た。
速水を抱いた左手と、反対の手でカーテンを引く。
意味ありげに目を細めるたいそう蠱惑的な男の笑顔と、その腕の中の華奢な少年の背中がカーテンの向こうに遮られ、善行は「おのれ」と口の中で呟いた。
せっかく七夕の夜、新たに出来上がる恋人たちを祝福してやろうとしているのに。
ひとの好意をなんだと思っているのか、あのけしからん男は。
善行は憤然として手の中のデジカメを見る。
せっかく速水との初ちゅー記念写真を撮ってやろうとしていたのに。
当人達にしてみれば大きなお世話なことを考えている髭面の胸ポケットで、携帯電話が震えた。

「はい。何ですって!新市街で芝村さんと来須くんがデート中!?
 すぐに向かいますよ!!」

満天の星空の下、満タンの士気で走り去る善行。
残された窓辺には、一年ぶりの再会を果たす天の恋人達にも負けないほどの愛の囁き。
くちづけの合い間に、速水は問う。

「ねえ、ほんとに、僕でいいの?」

思わず笑い出す瀬戸口。

「判ってないなあ、あっちゃん。
 あっちゃんは、俺の元に落ちてきてくれた星みたいなものなの。
 普通じゃ手が届かない。俺には勿体無いくらいだよ」

「瀬戸口さん…」

「…好きだよ」

少し掠れた声が少しだけ切なく響き、速水は長い睫毛を伏せた。
うっかり泣きそうになる。
嬉しくて、涙が零れそうになる。

「僕も…瀬戸口さんが好きだよ」

折角勇気を振り絞って言った愛の言葉は、半分、瀬戸口の口に食べられてしまった。
そして、それから続けようとした言葉も、全部。

一年に一度の星祭りの夜。
星に願いを掛けるなら、ただひとつ。
ずっと、あなたと…。






Fin

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えー、砂を吐かないで下さい。砂を吐かないで下さい。
私が書くらぶらぶなんてこんなものですね。試験も終わった事だし、折角七夕なので甘いお話を書いてみようと思ったのですが;
七夕に限らず、瀬戸口にとっては一年365日、恋人たちのための日でしょうけれどね(笑)


そんなわけで今日!もう、昨日か…(7/7 0:30現在)やっと、試験が終わりました。
やるだけやったっ!明日の昼には合否が判定するので(早)それで8月の予定が決まります。受かってたら2次試験の準備をするのだ。
まあ、落ちても受かっても7月は遊び倒しますけれどねv
で、落ちても受かっても8月の夏コミは行きます!
例によって一般参加か。どこかで売り子をしているかは判りませんが。
いつもぎりぎりになってしまうけれど、今回は早めに夏コミオフ会の告知を出して、参加者を募りたいと思います。
まだ詳細も決定していませんが、瀬戸口と速水への愛に溢れた宴に加わってやっても良いという方は神矢まで(笑)
いつも参加して下さっている方たちも、とても気さくな良い人たちばかりなので、初めての人もどうぞお気軽にv

とか、勧誘してみる(笑)

しかし…普段使わない頭を使って勉強していたのが、これで晴れて自由の身だ。
久々に遊べるのだと思うと、ちょっと涙が出そうです。
まずは水曜日に宇多津さんとデートのお約束をしていますv楽しみ〜vvv
6月中に誘って頂いていたのですが、流石に行けず…(苦笑)試験終了したのでさっそくリベンジなのです!


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