NHKの大河ドラマ「利家とまつ」。前回で柴田勝家と市が越前北の庄で 壮絶な最後を遂げました。「北の庄」とは現在の福井市です。 さて、このドラマ、前々から合戦に登場する利家の兜に巨大なトンボがあし らってあるのがずっと気になっていました。 秀吉の「ひょうたん」は有名だけど「トンボ」とは何故、と思ってたんです。
京都新聞に不定期でずっと連載されている小さなコラム「西陣織歳時記」を読 んで少し推論が立ちました。そこに紹介されていたのは西陣織博物館所蔵の 「百合蜻蛉洋装裂」というもの。 「洋装裂」とは明治時代になって宮中の礼服に洋装が加わったため、日本の古 典文様を洋風にしたもの。その裂(はぎれ)というわけです。
はたしてそれは金色の「百合」と黒の「蜻蛉(とんぼ)」の文様でした。 百合は根が幾重にも重なることから吉事が重なるとしてめでたいものとされて いました。そのことが縁起を担ぐ武士に喜ばれたといいます。また、その根は 非常食としても用いられました。(京都では「ゆりね」、普通に食べますけどね。)一方、蜻蛉は後ろへ一歩も退かないその動きが武士の動きとされ、「勝ち 虫」と呼ばれていたそうです。そう言われて見ればトンボの動きはホバリング゙ はするけれどバックギアはついてなくて、直線的で後退はしませんね。
そこで「なるほど」。「槍の又左」といわれた前田利家は古来からのその「勝 ち虫」にならってトンボを「しるし」にしたのではないか、と。 それにしても武士の好むふたつの「しるし」を身にまとう明治の貴婦人とは ・・・・。
ところで記事によればさらに古代からはトンボは死者の霊を天井に運ぶとされ ていて、お盆のころのトンボは「精霊蜻蛉」というそうです。 神秘の虫でもあるのですね。
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