散歩主義

2003年07月13日(日) VIVA! TOUR

ツール・ド・フランスは第7エタップが終わったところ。ちょうど今、アルプス・ステージのハイライト、ガリビエ峠とラルプデュエズの第8エタップが進行中。

それにして第7エタップは凄かった。34歳のかつての「汚れた英雄」リシャール・ビランクが見事に単独のエスケープに成功。このステージを見事に制したのです。結果、総合でもマイヨ・ジョーヌを獲得。
このコルシカ出身の男前、ビランクの活躍にフランス中が大騒ぎになっています。

フランスのツールでありながらフランス人の総合はおろかステージ優勝の数も少なく、いかにワールドワイドな企業スポンサーのチーム対抗とはいえ、その背後にはどの国の選手なのかという事もフランス国民の重大な関心事なのです。

なぜ「汚れた英雄」かというと、彼こそツール初の「ドーピングによる追放処分」を受けたフェスティナ・チームのエースにして、当時、数年に渡る山岳チャンピオンだったから。当時はぼくもロードレースの世界にどっぷり浸かっていて、アマチュアのレースにも出ていたぐらいだったから、強い衝撃を受けました。これじゃサーカスじゃないか…、と。彼にではなくドクターに責任はあったとは思うけれど。

フランスレース界から追放され、雇ってくれるチームがなくなりました。それでも練習とコンディショニングを放棄せずに続け、イタリアチームに拾ってもらいました。他の選手から嫌われるほど我が強く、自らをアピールし、いわれなく他を非難する。実はいやな奴だと思っていたんです。なんだか裏切られた、という気もずっとあったのでね。

それからもほとんどのチームとは一年契約。
だけど、しぶといのです。去年は魔の山「ル・バンドゥ」で単独アタックを決め勝ったし、若いころの連続して山岳を制する強さはなくなったものの、ここいちばんと決めたときの集中力と強さはさすがです。

背か低く、瘠せていて、きらきらひかる瞳の大きい、まるで少年のままのようなビランク。エゴの塊。登りもだけどダウンヒルの速さは命知らずともいわれる男。口を開き、口の回りに塩を吹き、瘠せた体を振ってぐいぐい登る姿に、こいつがプロだ、と思いました。
昨日はほんとに強かった。

ツールは20ステージ。まだ8番目。だけどたぶん今日、ある程度の差はできてしまうでしょう。ガリビエは標高2600メートルを超え、ラルプ・デュエズは数十のきついヘアピンを登ります。
優勝候補のアームストロング、ペロキ、ウルリッヒたちは元気です。
ぼくの贔屓はどうしても痩せる事ができずドイツ・テレコムをクビになったウルリッヒ。(素人が見たらどこが太っているんだと思うでしょうね。なにせ体脂肪率6〜4%という極限の世界だから)

東ドイツのスポーツエリートからドイツのエースとなり、若くしてツールの王者となりました。あのころのウルリッヒは無敵だったな…。まだ20代。いきなりスーパープロゆえの天文学的なマネーに溺れたと批判を受け、ドイツを追われ…。

ウルリッヒは今年、彼の才能に投資を決断したイタリアのスーパー自転車メーカー「ビアンキ」が作った、「チーム・ビアンキ」で走っています。久しぶりに画面で見たウルリッヒは見事にシェイプされ、集中しきった精悍な顔を見せてくれました。

大本命、5連覇のかかるアメリカのランス・アームストロングも今のところノー・プロブレム。彼は癌からの奇蹟の生還者だけれど、癌が治るまでいつまでもエースの席を空けて君を待っているといった、フランスの名門チーム「コフィディス」に見事に裏切られ、入るべきチームがなくなったことがあります。自らの経験と強さだけを武器にメンバーを口説き落としてチームを作り上げていったのです。そのUSポスタルチームは鉄面騎士団のよう。あまりのエースへの貢献の要求に耐えられなくなったメンバーはそこから離れるほど。

ぼくの好きな選手はみんな一度、地に叩きつけられています。それでもやめない彼らを見るために、今年もツールを見るのです。
そういう強者たちにこてんこてんにやられる、たぶん「今まで無敵」の若い連中の燃えあがるような眼も。

勝負はこれからです。



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