芥川賞受賞作「ハリガネムシ」を読みました。吉村萬壱さんです。 長さがそれほどでもないのと、文章に力があってぐいぐい進むものだから、あっというまに読了。
なんどか笑い、なんどか切なくなり、なんどか眉間に皺が寄り、それでも一気に最後まで読ませる力はさすが、でした。 内容はスラップスティック。あからさまにされる暴力は当然酷いけれども、その奥にある作者の目は一点を見据えて実にクールです。
「不快だ」「顔を背けたくなる」というのはわかるけれど、読んでいて、しかし、登場人物の破天荒さと剥き出しにされた暴力と性への渇望は、その奥に潜んでいるものを指差しています。 「もう、こんなのはごめんだ」という気分。これだけぶちまけられたが故に、だからこそここから歩くしかないという終わり方だとぼくは読みました。
ぼくの想像力は「暴力」をテーマにはしていないけれど、一貫して「暴力」をテーマにしている作者の、腰の座った「その先」を見ようとする視線をとにかく感じました。
タランティーノよりもむしろジャームッシュが撮ったら面白いかなとか、いやいや井筒さんが撮ったら面白いかもなどととも思ってました。 だけど「サチコ」をできる役者さんがいないでしょうね。
気になった台詞 『何より、私は自分の欲望に飽きていた。体のなかのハリガネムシが暴れるたびに死にたくなる』
めくるめく暴力とセックスの果ての、もう血も出ないぐらいくたびれた言葉です。
ちなみに審査員のなかでは女性陣が全員、高く評価しています。 そのことがおもしろいです。そのあたりに暴力を見るまなざしの違いや作品の読み方の違いの秘密があるのかもしれませんね。
文藝春秋九月特別号に全文掲載されています。
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