散歩主義

2009年07月18日(土) 教訓

ゴルフの全英オープンを見ていて寝不足になりました。
ゴルフ発祥の地にふさわしい、もの凄くワイルドなコースで、日本の若き俊英・石川遼がどこまでやるのか見届けてやろうとしていたのです。

毎年、行われているからそのシーサイドリンクス(海岸に立地する場)の悪魔のような各地のコースのえげつなさは普通の人間でも画面で知っていたし、石川君はそれこそ何度もビデオで観て心を躍らせていたのだと思います。

今年はスコットランドのリンクス。やはりとんでもないコース。
(全英オープンの開催はシーサイドリンクス(海岸に立地する場)に限るという不文律があります)
日本のゴルファーなら「こんなのコースじゃねえ」と怒り出す人がいるだろうなとおもうぐらい、フエアウェイ以外は荒れるがまま、自然のままのコースでした。
だからこそゴルフなんですけどね。
これがゴルフの原型。

初日はイギリスの海岸沿いではめずらしいぐらいの好天に恵まれ、アンダーパーで廻った石川君でした。インタヴューにも誠実に考えて英語で答える彼に、excellentという言葉が投げかけられてもいました。

ただ、「明日はドライヴァーでもっと攻めたいですね」と意欲満々に答える彼に多くの方が危惧を持ったのではないでしょうか。ぼくもそうでした。
なんせほんとにとんでもないコースだから。

そして二日目が始まり、当初はコンデイションも良好。同じ組のタイガー・ウッズも石川君もまずまずのスタートを切りました。ところがよりによって海沿いの10番ホールで天候が牙を剥きましたね。冷たい雨と海からの烈しい風。しかもここは断崖から海を越えて行く厳しいホール。

タイガーも石川君も果敢に攻めました。
そしてこのホールで二人は打ち砕かれてしまいました。かたやロストボール。かたやアンプレイヤブル。
このあとのホール、二人はショックを引きずりボギーを重ねていきます。ようやく後半、タイガーが二つの、石川君が一つのバーディーをとり、まるで自分たちの意地をぶつけるようにして、この難コースでのプレイを終えました。

寒さで硬くなる手と体。とんでもないアゲインストの風。誰でも刻んでいきます。二人ともそんなことは承知の上でのチャレンジだったのでしょうね。

これをどう見るか、です。
勝負としてはとてつもないリスクを抱えてのギャンブルともいえます。
無謀かも知れない。
だけど群れから抜け出すためには、あえて挑むべきでもあります。

タイガー・ウッズはそんなプレーを何度も見せつけてきていたし。
そこに挑むための準備もきっちりとし、自分に力はあるという自信とプライドが果敢に攻めさせていったのでしょう。

石川君はどうか。
プレイ後、本人が「悪いコンディションの時なのにバープレイでまとめていく勇気がなかった」と自己分析していました。
攻める勇気より退く勇気の大切さ、ということなのでしょう。

勝負にこだわるのならそれは正しいと思います。
そして観ている側は、勝ってほしい、いいスコアで廻ってほしいという思うが故にギャンブルに近い攻めに「危惧」をおぼえ、その結果「失望」という感情を味わったのでした。

ただ同時に彼らにはまだまだノビシロがあるな、ということも感じたのでした。
小さくまとまらず、スケールの大きなプレイをし、意欲を見せ、結果をきっちり見つめることができたということは、さらに大きな飛躍への教訓ときっかけを得ることになったのではないだしょうか。

石川君はそういう意味でとてもいい経験をしたようにと思うのです。

来年の「The Open」が楽しみです。
今年まだ17歳なんですから。



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