ぼくは人との出会いというものがあまり好きではない。 会えば別れが辛いから…、というわけではない。 直感的に「こいつは合う」と思える人は問題ないのだが、もともとが人見知りなほうなので「どうもこの人は苦手だな」と思う人に出会ってしまうと、とたんに構えてしまうのだ。 構えるというのは、心がこわばっている証拠で、そういう心の状態をぼくは好まないわけだ。
構えもその時その場で終わればいいのだが、ずっと引きずるのだ。 仮にその人との付き合いが長く続いた場合、何かの折に構えが出てしまう。 それゆえに人からの評価が、その人その人で違うわけだ。 「しんたは底抜けに明るい」と思っている人は、ぼくが出会いの時に「こいつは合う」と思った人で、逆に「しんたはちょっと暗いから」という評価を下す人は、実はぼくが出会いの時から構えている人なのである。
そういう人見知りな性格のくせに、なぜか人と接する販売業を選んでいる。 ま、仕事は別というふうに割り切っていたわけだが、それでも苦手なお客さんというのはいた。 そういう人を相手にする時は、自分をさらけ出すのをやめて、「はいはい、おっしゃる通りです」と流れに任せていた。 だから、そういう人に接する時は、「何が何でも売ってやる」という気持ちは抱かなかった。 流れに任せていたので、買わなければ買わないでいいという気持ちだったのだ。
ところが、不思議なもので、そういう気持ちを抱いて接していると、なぜか売れるのだ。 それも高いものが。 お客さんはなぜか満足しているようで、その後もちょくちょく声がかかったものだ。 しかし、ぼくの心の片隅にある苦手意識がなくなったわけではなく、相変わらず「はいはい、おっしゃる通りです」で接していたのだった。
こういう出会いの時の直感を後生大事に持つ性格は、直感を重視するさそり座の人が普通に持つものなのだろうか。 今度、同じさそり座のオナカ君に聞いてみることにしよう。
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