ぼくは「なんと呼ぼうと、おれの勝手やろ?モリタ君はモリタ君やろ?ちがう?」と言った。 「そうですけど、もうそろそろいいかと思って・・・」 「この会社でおれのこと主任と呼びようのは、あんただけやろ。他はみんな『しんちゃん』と呼びようよ。あんたが『しんちゃん』と言うたら、おれも考えてやってもいいよ」 「いや、それは・・・」 ぼくはその後もいっとき『モリタ君』で通した。
ある日「モリタ君」と言うのが面倒臭くなった。 そこでぼくは「モ」と呼んだ。 「モはないでしょう?」とモリタ君は言った。 「あんた以前、呼び捨てで呼べっち言うたやん。モでよかろうがね」 「モはやめてください」 「いいや、モでいく」 ぼくはそれから会社を辞めるまで『モ』で通した。
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