彩紀の戯言
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2000年10月12日(木) 『アイドル』

私が高校生の時のお話。
1年のクラスで私が所属したグループのメンバーには幸か不幸か可愛い子が多かった。

「幸」は鏡より友人の顔を見ることの方が多いので、
自分も可愛いと錯覚できるという点だろうか・・・。
「不幸」は・・・どうしても引き立て役になってしまうところ。←卑屈な考えだ

私は可愛い子とそうでない子の境界線を自分の手前に引いていた。
私の後ろというか最下位タイには1人いるだけ・・・。「なこ」という子。
もちろん私はそうでない子に位置づけたので彼女もそちらに振り分けられた・・・。

言い訳に聞こえるかもしれないが、私と彼女は「ぶちゃいく」ではない。
極普通の容姿。それだけ、グループのレベルは高かったのだ。
入学早々こんなこと考えるのだから、少なくとも私の中学校のレベルより高かった。

ところが半年ほどたった頃、同じクラスの男子が「なこ」にいろいろと話しかけ始めた。
「なこ」はとても大人しい子なので男子とペラペラと話すタイプではない。
戸惑っている「なこ」が私の目にもとても可愛く見えてきた。

よーく見てみると「なこ」は田中裕子さんのような顔立ちをしている。
目も鼻も口も優れた特徴はないが全体的にバランスが取れているのだ。
それでいて「ほんわか」タイプ。ちょっぴり「天然」ミックス。

いつしかファンクラブができ、球技大会、体育大会では「なっこぢゃぁぁぁん」である。
まるでアイドルではないか・・・。最下位タイでは失礼だ。一気にトップへ昇格。
しかし、「なこ」は相変わらずで、照れながら「もう、やめてよぉぉ」とファンに言い続けた。

そんな「なこ」だから女子生徒の反感を買うこともなくクラスは円満。
というのも、隣のクラスの美女は鼻が高すぎたばかりに総スカンをくらっていたからだ。
大人げない・・・。実際にはまだ子供なのだが、そう感じたことだけを覚えている。

美女・・・高校生にはふさわしくない表現だが、今卒業アルバムを見ても
ホントに綺麗な子がたくさんいる高校だったのだ。
特に友人には美人が多くて・・・・う〜、辛かったよ(笑)

だから、「なこファンクラブ」の存在を意外に思ったのが正直なところかもしれない。
普通の女の子なのに・・・・。普通・・・。普通?
そうか!!普通の女の子集団「おにゃんこクラブ」の時代だったのか!

今、謎が明らかになった気がする・・・。←もしかして失礼?
普通の女の子アイドル化計画はブラウン管の中だけでなかったのだ。
恐るべし秋本康。

クラス替えの後、「なこ」ファンクラブがどうなったかは知らないのだが
高校3年間「なこ」に彼氏ができたという話はついぞ聞かなかった。
一時期でも「なこ」がアイドルだったからだろうか?

アイドルは偶像であるから「誰かのモノ」になってはいけない。

そんなイメージがついてしまった「なこ」はそれをどう思っていたのだろう?
普通の女の子でもアイドルになった時点で「個」が失われてしまうのだろうか?

一瞬でも「なこ」に憧れなかったか?と聞かれたら言葉に詰まってしまう。
思慮深くもなかったあの頃、「なこ」の気持ちを考えたこともなかった。
ただ、ただ・・・羨ましく思っていた。

望んだ訳でもないのにアイドルになってしまった「なこ」と、
普通に彼氏を作り高校生活を送った私。

十数年後の今、どんな価値観の違いが生まれているのだろう?


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