+シコウカイロ+
此花



 明け方の夢。

突如襲ったその恐怖は
全てをその赤い体の中へ呑み込んでいった
裂けた割れ目から溢れ出た
おびただしい量の息吹が
人の肉も骨も一瞬に溶かしていく
迫り来る恐怖に寸前で逃げ切ったけれど
孤立した場所は
逃げ惑う人で溢れかえって

逃れた喜びも束の間

水は熱気にすべて
昇華してしまう
食料も尽きて
世界は赤く染まって

この終局の時にさえ
ヒトハアラソイヲヤメナイ

赤く燃える地平線に沈む金色の光は
まるでその体内に呑み込まれているかのようで
流れることをやめない溶岩は
次々に人を飲み込んだ

まるでこの星が流している
血であるかのように
地獄の業火に焼かれて消える
人の姿をした塊が消えていく

一瞬にして何もかもを地上から消し去った

今この地上に生きているのは
私達だけかもしれないのに

それでも
ヒトビトハアラソイヲツヅケル

助けを求めたその手に
「神」に似せた像をかかげ
「神」の振りをした醜い「人間」が
偽善の手を差し伸べて
降り注いだのは「愛」と言う名の
爆撃。

コロサレタ。
コロサレタ。

私の大事なものは
奪われた

誰でもない
貴方に。



この世界が終わる時に
この星の流した涙の理由も知らずに
ヒトハアラソイヲツヅケル
ヒトハアラソイヲヤメナイ
地の雨が世界を覆い尽くす前に

もう生きることの意味など要らない私に
貴方は「愛」を振りまいて
血の雨で自分を満たす哀れな同じ生物になれと
言うのか
言うのか






私は世界を見捨てた。

そして

君を 探すための旅に出る。


2001年05月13日(日)
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