慰めはいらない

 私は震えながら、それでも正面から向き合ったつもりだった。
 でもこうなってみて、それが自分のエゴだったんだと知った。
 一番楽な言葉で、一番楽な呼吸法でいられる場所を捨てたくなかっただけだと気付いた。
 男女という違いはあれど、長い時間を共にしたからわかってくれると、どこかで希望を持っていたんだ。切り捨てられても、本当に互いが大切ならいつか納まるところに納まると。
 だからいま現在はともかく長期的には切らないことを選択したのだ。
 でもここまで来ると、自分の日本語能力に疑問を持つわけで。
 時々我慢できなくなる男だけれど、境遇も似ているし、同情とは違うけれど、弛緩した心地よい空気を共有できる数少ない場所のひとつだと思っていた。互いに。それは独りよがりだったのかな。
 彼は彼で、私を心配しているのかも知れない。
 私は相変わらず不安定だし、それを理解しているみたいだった。
 正直な話、迷った。甘えてもいいかな、くらいに。
 彼は多分、同年齢だけれど、私よりは「大人」だと思う。家庭環境も複雑だし、経験も豊富だ。正直甘えてみたかった。自分が割り切られるなら。
 でも甘えられるくらい、彼は「大人」ではないと思う。なんだあの粘着質な電話は。
 きみに心配されるほど、私はそこまで不安定じゃない、と思う。
 寧ろきみのことばがいまは不安定材料だし、きみのことが心配だ。
 少し、距離を置いてみよう。
 云いたいことは云った。甘えない。自立して向きあいたい。
 不安定ながらも治したいし、自立したい。そのための努力をするつもりだ。
 だから彼の慰めはいらない。
 伝えたいことを伝えた。がんばって。
 納まるところに納まるなら、それを待とうと思った。
 少し距離を置こうと思う。
2005年05月29日(日)

メイテイノテイ / チドリアシ

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