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 サンキュー・ボーイズ(BOOK PLUS)/ビバリー・ドノフリオ

「15歳で母になった少女が、オーマイ・ガッド!な20年を駆け抜けて、作家になる夢をかなえる感動のトゥルー・ストーリー」

これに騙されてはいけません。ビバリーが母になったのは、17歳です。
それはともかく、このコピーよりは、こちらのほうが的を射ている。

「最大の敵であり最愛の相手である男たち・・・父親、恋人、夫、そして息子・・・に贈る愛の言葉」

つまり、とっても感動ものの話だったのだ。
最初のコピーを見て、また時代的な背景から、不良少女がセックスとドラッグにはまってぶっ飛んでいる、わけのわからない描写の羅列なのかと思って、全く期待していなかったのに、最後は感動して涙にくれてしまった。
文章もテンポがよく、面白い。懸念していたドラッグの話も、「ドラッグをやっていい気持ちになりました」で終わっているので、ほっとした。常々、ドラッグをやっている場面で、わけのわからない事を延々と書き連ねてあるのは最低だと思っているから。

何と言っても、主人公ビバリー(作者のこと)の明るさがいい。とんでもなく運が悪く、貧乏で不幸なのだと書いているのだが、それを吹き飛ばして、常に前向きに生きている。

妊娠、出産、貧乏、離婚、大学入学、大学院進学、子離れ、作家デビュー・・・みんな大変なことばかりなのに、いとも明るく簡単にやってのけている。もちろんその裏には、とんでもない努力をしているのであろうということは、わざわざ書いてなくても、想像がつく。

「どう思うかは、わたしの選択次第」とあるように、起こってしまったことを悔やむよりも、それをいかに幸せに変えていくか。運命の中で苦しみもがくよりも、それをいかに受け入れるか。ということなのだ。こんなビバリーに、私もどれほど元気づけられただろう。辛いことや苦しいことを、幸せに変えていかなくちゃいけないのだと思ったら、とても元気が出てきた。そこには、ダメなものはダメと切り捨てる勇気も必要なのだ。

大嫌いだった父親の本当の気持ちが分かったこと、いつもうるさい母親が、何十年もの間ビバリーのために毎日祈ってくれていたこと、何もしてやらなかった息子が、ビバリーをちゃんと母として認めていたこと、そんなことを成長したビバリーが知っていく場面で、思わず涙が出てしまった。皆が自分を心配し、愛してくれていたのだと気づいていく。若い時は気づかないこと、自分がその立場にならなければ分からないこと、そういうことを、ひとつずつ理解していくのだ。

タイトルの『サンキュー、ボーイズ』だが、原題は『Riding in Cars with Boys』である。それがどうして「サンキュー」になってしまうんだろう?と疑問に思っていたのだが、最後まで読めば、その疑問が解ける。

「よいことも、悪いこともみんな私の幸せの素」なのである。

2002年04月06日(土)
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