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■ 一杯のおいしい紅茶/ジョージ・オーウェル
オーウェルのエッセイ集で、庶民的な立場から見た文化論、身辺雑記といった感じのもの。1900年代前半のことなので、だいぶ感覚的にはずれているが、政治的風刺の強いオーウェルのイメージとは、かなり違う一面が見られる。シニカルだがユーモアのある作家と思っていたのだが、このエッセイ集は、彼の実に真面目で保守的な性格を浮き彫りにしている。
「オーウェル自身の言葉を借りれば生まれた時代の偶然のせいで政治的関心を持たざるを得なかった半面で、彼は教条主義的な考えとは別の、一人の人間としての気持ちを忘れずに、自然を楽しめる心の意味について説き、動物を、生活の周辺の小物を、伝統的な食べ物を、ビールを愛し、昔を懐かしんだ」 ──訳者あとがきより
あとがきにもある「生まれた時代の偶然のせいで」というところに、私も思いが及んだ。彼はたまたま戦争の中で生きてきたのであり(そういう人は世界中に大勢いるが)、戦争とは庶民の生活をけして幸福にはしないということを感じた。庶民を犠牲にしてする戦争とは、誰のためのものなのか?オーウェルの時代に戦争がなかったら、当然もっと違う作品が生まれていたことだろう。戦争の時代に生まれたために彼の作品は暗さがあるが、もし戦争がなかったなら・・・。
それにしてもイギリス人というのはなぜ、こうも紅茶の入れ方・飲み方にこだわるのだろう?オーウェルの主張にも、こうするべし!というのが10項目くらいある。日本人もお茶(葉っぱは一緒だ)をよく飲むが、ここまでこだわっている人がどれだけいるだろう?紅茶をティーバッグでしか入れない私など、口が裂けても紅茶好きとは言えないのだろう。しかし「紅茶はブレックファースト・カップ(マグカップ)で飲むべし!」というのには、大いに賛成だ。高価な平たいカップ&ソーサーで飲むよりも、マグで飲むほうがたしかに美味しい。
2002年04月20日(土)
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