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■ 買い物中毒のひそかな夢と欲望/ソフィー・キンセラ
「あーぁ、また買いすぎちゃった! 来月(さ来月)のカードの請求書を見るのが怖い! だめよ、だめよ、今月はもう節約しなくちゃ、と思いながら、すてきな服、すてきな靴、すてきなバッグを目にすると、どうしても買わずにいられなくなっちゃう! もしかして、わたしっておかしいんじゃない?」
すてきな服や靴を本に置きかえると、そのまま私のことになる。うげげ!お金もないし、どこかから転がり込んでくるあてもないし、なのに「どうしても必要なもの」あるいは「あとで必ず役に立つもの」、「今買わなければあとでは読めないもの」と勝手に言い訳して、毎月性懲りもなく、紀伊国屋やAmazonにつぎ込んでいる私。もしかして、おかしいの?
主人公レベッカ・ブルームウッドは25歳、金融関係の雑誌社に勤めるジャーナリスト。“いかにして自分のお金を管理するか”を読者に教えるのが彼女の仕事。ところがこのレベッカ、経済観念はゼロ。すてきなものを見ると、すぐに「買いたい」病が始まる。どれもこれも彼女にとっては“ぜったいに必要”なもの、だから“買わなくちゃ”となる。わかっちゃいるけど、やめられない。
銀行の口座はいつも赤字状態、あちこちのカード会社からはひっきりなしに督促状が送られてくる。どうにもこうにも立場がなくなってしまったレベッカだけど、最後には仕事にも恵まれ、王子様までゲットしてしまう。ずいぶん都合が良すぎるのでは?と思うけれど、終始貫かれている彼女の明るさと、世間から「ダメな人間」扱いされた辛さに免じて、このハッピー・エンドは許してあげたい。我ながら身につまされる部分もあるだけに、なんとか上手く切りぬけて欲しいという気持ちで読んでいた。
全体的には『ブリジット・ジョーンズの日記』を思わせる話、文体。話の中に出てくる本は自己啓発本に『高慢と偏見』だし、吸っているタバコは「シルクカット」、朝はカプチーノにチョコレートマフィン、王子様となる男性とは最初のうち険悪、でも女友達には恵まれている・・・と状況設定はほぼ一緒だ。ただ日記形式ではないだけで、『買い物中毒のブリジット・ジョーンズ』でも『ブリジット・ジョーンズのひそかな夢と欲望』でも十分通用しそうだ。
BJも、このレベッカも、なぜかかわいくてコミカル。レベッカに至っては実のところ自己破産寸前だというのに。彼女達は皆根っから善良なのだ。およそ犯罪とは無縁で、例えよだれの出そうな申し出があっても、いざとなれば自らの正義感によって、自分が窮地に立つほうを選ぶ人間なのだ。だから絶対に憎めないし、応援してあげようという気持ちになる。人の不幸は蜜の味であるから、レベッカの失態も人ごとだと思って大いに笑えるのだが、最後にハッピーエンドになって、素直によかったなと思えるのだ。
2002年04月23日(火)
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