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■ 写真
どうしても学校指定の履歴書(じゃないといけないのだ)と 写真が必要になって、合間を縫って写真屋に駆け込んだ。
リクルートスーツと、振袖の女の子たちとが、長い列を作っていた。 誰もが今はそういう時期なわけで。 苦しいのは私だけじゃない、と自分を戒める。
3時間仕上げというやつを頼んで。 撮ってくれた女性がすごく感じの良い人だったんだけど、 それでも写真の苦手な私は、ひきつった顔しかできなくて、 一生懸命指示に従うんだけど、上手くゆかなくて。 優しく何度も撮りなおしてくれるお姉さんに、申し訳なくなってきて。 なんで笑えないんだろうって哀しくなった。 筋肉が別の人のもののようで、まるで言うことをきいてくれない。
写真の作り笑顔っていうやつが私はきわめて苦手だ。 めちゃくちゃ小さい頃の写真は、さすがに天真爛漫に写っているけれど。 ある程度もの心ついた頃から、写真はずっと苦手だ。
そういえば、母はとてもにこやかに写真に写る。 それまでけんかしていたような時だって。 その横で私はいつも照れたような笑いしか見せない。 それか、ふてくされているか。 器用なのか、自信があるかないか、の違いなのか。 よくわからないけれど、とにかく苦手だ。
無理矢理あげた頬がぴくぴくしてきて。 どのくらい唇を引き上げたらいいのかとか、 ああ、目が笑ってないな、とか。 いろんなことを考えてしまう。
本当は鏡を見るのだって大嫌いなのだ。 だから、鏡に向かって自分の笑顔の研究するなんてのもきつい。 作り笑いをしようとしている自分を見ている自分がいて、 とても居心地の悪い気持ちになって、つい目をそらしてしまう。 私には笑顔なんて似合わない。 間違っても「自分にうっとり」なんてムリだし。 「あたしってカワイイ」とか自己暗示さえかけられないし。 つまり、自信なんてないのに、あるふりはできないのだ。 “にこやかに、やさしく、はなやかに”とカメラマンにさんざん言われたけど、 他の女の子のように、ぱっと華やかな笑顔などつくれないだってば。 なので、言われれば言われるほど、無理をして、どっと疲れてしまった。
それでもさすがに仕上げ方がきれいなので、 困った顔のままでもそれなりに一応笑顔にはなっていたけれど。 なにか苦い気持ち。 ああ、ムリしてるなあというのが、よくわかるから。 ―自信なさげな表情。 しみやくま、ニキビあとを隠す修正を行うので有名な写真室なのだけど、 私は肌にはさして修正を加えるところはなかったけど、 (顎を削って欲しいとかなら、あるけれど…笑) もしも表情に修正を加えられるなら、それが一番欲しいものだった。
でも“証明写真”なのだ。 笑顔をぱっとつくることだって、それもひとつの本人の才能だ。 それができないのもまた、私という人間の証明になってしまうのだ。
2001年02月09日(金)
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