unsteady diary
riko



 サボテン


うちには「サボテン」という分厚い本がある。
3年前に配布されて以来、はじめて開いた。
高校時代の95年4月〜98年3月まで、毎週一日も欠かさずに発行されていた学年通信をまとめたもので、私の3年分の生活がつまっている。


例えば、学力テストを断固拒否するというある生徒の出した張り紙の写真。
それを真剣に受け止め、「サボリ」とは一線を画するものとして捉えてくれる先生からの問題提起。
日の丸・君が代問題に関して、校長がむりやり押し切ろうとしたときも、一部の先生方が生徒の味方をして一緒に当日、日の丸掲揚を防いだんだった。


在学中に、千葉県の方針で、教師は10年以内に例外なく異動するということが決められ、4年以内に例外なく実施されるというので、先生たちが抵抗していたことがある。
こんな現場での混乱、生徒の抵抗、そんなこともすべてが、
オープンに毎週発行されていた。
教師だって「聖職」じゃない、いろいろあるんだってことが、
ストレートに伝わってくる通信だったと思う。


もちろん、すべてがそんな尊敬できる先生なわけはなくて、
横暴な人だっていっぱいいたけども。
生徒と一緒に、「先生である自分」を悩み続けた人たちがいる高校の生徒であったことを、今でも私は誇りに思う。


とにかく、話し合うことを大切にする風土があったんだと思う。
昔、制服を廃止して私服にしようという運動があったときも、
生徒と学校の話し合いで、実現されたのだと、入学してから聞いた。
そんな風土が残っているからか、甘やかすのと違う、生徒の意志尊重があった。
なのに、それを活かしきれなかった。
私も含めて、大多数の生徒にとって、自分で決められる喜びより、面倒臭さのほうが勝っていた。


生徒を信頼しているからこその放任主義は、今になって、つくづく貴重なものだったんだと思い知る。
誰だって怒鳴って暴力みたいなもので抑えるほうが簡単だ。
でもそうしないでいてくれた。
集会のとき、みんなが静まるまで、30分でもずっと待ってくれていた。
やがて生徒自身が気付くまで。


私が卒業したのち、10年以上ずっとあの高校を支えてきた、骨のある名物先生たちがみんな異動になってしまって、ずいぶん雰囲気が変わったと聞く。
確かめるのが少し怖い。
でも、私の頃でさえ崩壊していた生徒による自治。
しょうがないこと…なのかな。


2001年04月29日(日)
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