ニッキ ゆり 【HOME

My追加

2002年10月25日(金)

ずーっとずーっと側にいたい。
何回も思う。
会うたびに、送ってもらうたびに思う。

実習後、車で拾ってもらい
近くのレストランでご飯を食べる。
海までドライブして、とことことテトラポットまで歩く。
夜の海は真っ暗で何も見えない。
防波堤に打ち寄せる波の音だけが聞こえた。

手を繋ぎながら防波堤を歩く。
道路からの明かりがワタシたちの影を映し出して
影はワタシたちよりも前に伸びていて
その影はちゃんと繋がってひとつになっている。

手を繋いでいなくても
その影はずっとくっついたまま。

少し歩いたらタバコを取り出して2人で吸う。
何も話さなくても気持が繋がってる感じがした。

防波堤から大きなブロックの石へジャンプした。
ワタシはジャンプしても届かないだろうと思って
「やめとく」と言った。
「大丈夫だよ。ほら、つかまって」と体を抱きしめられた。
「せーのっ」ワタシはいきなりの事でドキドキして
ちゃんとつかまっていなかった。

2人共ブロックの石の間に転んだ。
ワタシは頭をゴツンと打って、ものすごい音がした。
かばってくれたそのひじには、小さなかすり傷が出来ていた。
「大丈夫?!」
「そっちこそ大丈夫?俺は平気だよ。大丈夫?頭打っただろ?」
少しコブが出来たぐらい。
ワタシは大丈夫だった。
むしろかばってくれて出来たそのかすり傷のほうが気になった。

転んでも2人共笑ってた。
おかしいぐらいに大きな声で。

誰も居ない海に2人の笑い声だけが響いてた。
そんな感じがした。

また少し歩き出してから、かすり傷をライターで照らして見てみた。
血がうっすらとにじんでた。
「大丈夫?痛くない?」
「平気。少しヒリヒリするぐらい」
「今日のお風呂きっとしみるね」


ギュっと体を引き寄せられて、また転びそうになった。
「また転んじゃうよ。」
「だな。」
転ぶのはお互いもう嫌だったから
手を繋いで歩いた。

車に戻って少し話をした。
ワタシのこと、実習のこと、職員のこと、学校のこと。
でも、うまく話せなかった。ワタシのことだけは。
知ってもらいたいくせに、ちゃんと伝えられない。
「ワタシのこと知ってもらいたい。」
「大丈夫だよ。いずれ山ほど聞くし。」
「いずれ?今がいいよ」
「大丈夫。これからもっと知っていくし、知りたいしな。」

家の近くのコンビニに車をとめて
歩いてうちまで送ってもらった。
コンビニから家までの間に小さな公園があって
またそこで少し話をした。

お姫様抱っこは嫌いじゃないと思った。

空を見上げたら綺麗なお月様が出ていた。
ワタシは寒すぎて涙が出そうだった。
暖かい手を握り締めて
空いた片方の手を使って2人でタバコを吸った。

「年なんて関係ないからね」
「わかってるけど、やっぱ若いじゃん?」
「一緒に居て違和感ある?」
「ないよ。最初の頃に比べたら全然ない。」
「そうやって何にも気にしなくなる時が来るよ」
「早く来ればいいな」


明日も会えるのに、離れたくなかった。
明日も仕事で明日も実習。
それでも眠りにつくぎりぎりまで一緒に居たかった。
暖かい首元に顔をうずめて、なんども匂いを感じた。
大きな肩幅。
抱きしめるたびにいつも思う。
「ちいせぇなぁ」
抱きしめられるたびにいつも言われる。
「小さいわりに落ち着くな」
一番嬉しかったコトバ。

実習が終わったら会えなくなる。
毎日毎日会えなくなる。
今は実習で会えるけど、でもそれが終わったら…。

実習が終わってワタシが東京に戻って
それからが本当の付き合いだと思う。
だから今は恋人同士じゃない。
それなりに制限を作って一緒にいる。
抱き合うのも、やっぱり制限がある。



楽しいと思うことを楽しいと言えて
嬉しいと感じることを嬉しいと言い合える。
そういう人はめったにいないから。
「男勝りの性格でも中身は違ったんだ。」
それだけ感じてくれたならワタシは十分幸せ。





BACK NEXT 初日から日付順 最新 目次