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必要性も必然性もない、「偶然」 - 2001年06月02日(土)

今日で取材は終了です。
今回の学会は、見ていて気の毒なほど、盛り上がりに欠けるものだった気がします。来年に、期待しましょう。

夕方の新幹線で、帰ってきました。
5時21分東京発。
乗る前に、ちらっと、「一緒の新幹線に乗ってたりして」なーんて考えてしまいました。ありえるわけないんですけど。

大阪まで同僚と今回の仕事の話や、会社のこと、恋愛のことなど、ほんとよく話しました。
普段はそれほど良く飲みに行ったりはしないんだけれど。同じ体験をしていることが、話しやすくなっているのかもしれません。

新大阪に着きました。
ホームへ降り、エスカレーターを降りて、改札を出る前に、かばんから切符を出し、ふと、顔を上げたとき。

横顔だけで、分かりました。
ごった返す人の中で、ほんの一瞬、見えただけで、すぐにあの子だと分かってしまいました。
あの子はもちろん私には気付きません。
オレンジ色のブラウスも、オフホワイトのパンツも、薄汚れたスポーツバッグも、どれも何度か見たものでした。

「あの子がいる」
一緒にいた、同僚に言っても、最初は信じませんでした。
「見間違いちゃうん」
そう、いいました。でも、私は確信してました。顔を見たのは一瞬ですが、あの子だと、「わかって」いました。
一瞬でも。

大阪へ向かうためホームへ降りて、オレンジ色のブラウスを着たあの子を見ました。
「声かけたらあかんよ。せっかく忘れかけてるやん。今話したら元にもどるで」
そう、同僚に言われました。
その同僚がいなければ、話しかけていたかも知れません。

近くで見たい、気付いて欲しい

多分、その時はそう思っていたんだと思います。
でも、隣の車両に乗りました。あの子がどこにいるのか、その車両からは見えませんでしたが。
大阪駅に着いて、同僚に「声かけへんかったのは、えらかったと思うわ」といわれました。
その同僚と別れてから、しばらく、あの子を眺めていました。
私たちが乗ってきた電車は普通電車で、5分ほど、快速待ちのために停車していたからです。ホームの柱に寄りかかってあの子が、楽しそうに本を読んでいるのを見てました。

「声をかけようか」
そういう思いもあったけれど、体中が震えて、柱に寄りかかって立っているのが精一杯でした。
「声をかけたい」そう思っても、きっとその時は歩くことも、声を出すこともできなかったと思います。

ドアが閉まりました。
あの子は本に夢中で、顔を上げることはしませんでした。顔を上げたとしても、私に気付くことはなかったかもしれないけれど。
本を読みながら、笑っているあの子を見て、「かわってないな」と思いました。
笑い方も。
そして、それを何故か淋しく思いました。
ああ、あの子は私がいなくても、やっていってるんだ。
当たり前なんだけれど。それが、悲しくなりました。

どうして、会うんだろう。
会う必要もないときに。
学会が早く終わって、もし、指定よりも早い新幹線で帰ってきていたら、会うことはなかった。
もし、新幹線から降りるタイミングがずれたら、改札であの子を見ることもなかった。
もし、私があの時顔を上げなければ、あの子を見つけることはなかった。
「あの時」「あの場所で」会う必然性も、必要性もなくて、それはすべて「偶然」の一言で片付いてしまう。
一瞬、横顔を見ただけで私はあの子だと気付くのに。

このまま、忘れていくと思っていた。
忘れるまで、会うことはないと思っていた。
何が、楽しくて私をあの子に会わせるんだろうか。
私があの子を忘れるのを邪魔するように。

今回、初めて「あの子に会わない東京出張」になるはずだったのに・・・。










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