そう言って、彼は私から離れていく。 彼はゆっくりと頭を振った。 「それは、できないよ……」 彼女を包んでいる彼の腕が、少しきつく締まる。 「でも、待ってて、とも言えない。それはきっと、僕の重荷になる。――大切だから、独りを選んだんだよ」 押し込めたような声が聞こえた。それと同時に、彼女の頭にΓテツリと温かいものが落ちた。 (……泣いてるの?) 「嫌いになってもいい。でも、分かって欲しい……」 彼女は顔を上げた。いつでも、彼の選んだ道は彼にとって正しい道だった。だからきっと、この道も正しいんだろう。
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