short story


2001年02月07日(水)


17-眩暈-
いらない。
彼女は首を振りながら、確かにそう答えた。
なんだって?なんて言った?
いらない?どうして?
僕はひどく混乱した。
彼女の言った言葉が理解できなかった。

「え?どうしていらなんだ?あると便利だろ?」
もしかしたら声が上ずっていたかもしれない。
それほど、彼女の答えは僕の予想に反していた。
だって、
合鍵を持つということは
二人が特別な関係だという証に他ならないからだ。
僕らはすでにただの友達ではなかったし、
彼女にとっても僕は特別な人なんだと考えていたから
今更、断るなんて思ってもみなかったのだ。

彼女は、少しだけ悲しそうに
「だって、私たちは恋人同士じゃないから。」
と言った。

僕は血の気が引くような思いだった。
眩暈がした。
彼女の言葉に。
その真実に。
そして自分の愚かさに。

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日記才人