話も一段落し、酔いも覚めたので僕らは軽くドライブに出る事にした。 しかし、なんせ真冬のことだ。 近場をフラっと回って終わるだろうと思っていたら 彼はなにを思ったか海に行くと言い出した。 昔、二人でよく行ったドライブコースだ。 まぁ、とくに急いで帰る理由もなかったし、 懐かしさもあったので反対しなかった。
海に到着。 冬の海。寒くて外に出られず。 真っ暗闇で見えるはずもない。 僕らは早々に来た道を引き返した。 一体、なにしに行ったんだか。
彼女はすでに後部座席で眠っていた。 眠そうだったので僕と席を交代させると、あっという間に眠りについたのだ。 僕らは、彼女を起こさないように懐かしい話などしながら ゆっくりと車を走らせていた。
もう家に着こうかという頃、 いつ目が覚めたのか、彼女が、 「二人って仲がいいんだよね?」と聞いてきた。 いきなり後ろから声をかけられて、「おっ!なんだっ」と驚きながらも 僕らは二人で 「そうだよ。」と答えた。 なぜそんなことを聞くのかと尋ねると、 ちょっと前から目が覚めて、僕らの様子をうかがっていたら どうも二人の口数が異様に少ないので、 本当に親しい間柄なのか疑問に思ったそうだ。 僕らは思わず笑ってしまった。 なぜならこのセリフは昔から色んな人に言われている事だったからだ。 そんなに無口かなぁ。と思うのだが、端から見ればそうらしい。
彼は「こいつといると話すことがなくなるんだよ。」と、 ともすれば誤解を招きそうな言い訳をした。 僕は笑いながら つまりは、お互いをよく知っているから話す必要がなくなるのだ。 と彼の言葉を補足した。 彼女は一応頷いたが、分かったような分かってないような表情をしていた。
僕は優しい沈黙を与えてくれる相手ほど親しい者はない。と思っている。 そういった意味では、彼はあの人と並んで数少ない僕の大切な人だった。 それを彼に話したことはないけどね。 そんなの恥ずかしくて言えないって。 ま、ともかく。 彼女も彼と付き合っていくうちに僕らの言った言葉の意味が分かるだろう。
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