short story


2001年02月15日(木)


25-浮かんだ質問-
様子がおかしいことに気付いて
「どうした?」という彼に
僕は、なんでもない。と誤魔化した。
とりあえず彼には、僕には彼女はいない。
その情報はなにかの間違いだ。と説明した。
彼はなにか要領を得ないような顔をしていたが、
結局、納得してくれたようだ。

すごく重要なことを聞かれたのに
ひどく冷静だった。
諦めに似た感情で。
ぽっかりと。
浮かんで、どこかへ飛んでいってしまったような感じがした。
僕がその問いをしっかり掴んでおけないで
飛んでいくのを見ているしかないようだった。

別に僕は記憶喪失者でもないし、馬鹿でもない。
彼女の事についてなに一つ知らないことを忘れていたわけではない。
そんなことは、分かっていた。知っていた。気付いていた。
でも。なんというか。うまく説明できないのだけど、
それははじめ、必要なことではなく、
必要になった時、すでに踏み込めない領域になってしまっていた。
とでも言うか。

僕がなぜ、彼女の名前も知らずに
4ヶ月もの間、過ごさざるを得なかったかは
彼女との出会いから話さなくてはならない。
そのおかしな出会いから。

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日記才人