4ヶ月前。9月。 その週末、僕は久しぶりに友達と飲みに出かけた。 体調もよかったせいかいつもよりも大目に飲んでしまって いい酔い加減になっていた。 北の夏は短い。その時期、夜にもなれば半袖では少し肌寒いが 体が火照った僕にはちょうど良かった。
友達と別れ、僕は酔いを覚ましながら 一人てくてくと歩いて自宅に向かっていた。 別に歩くのに支障があるほど酔ってはいなかったのだが、 気持ちよかったせいか、ことさらにゆっくり ちょっとわざとにフラついてみたりしながら歩いていた。
やがて小さな公園の横に差し掛かる。 僕はその公園を通って行けば近道だ、ということを思い出し 通り抜けることにした。
夜の公園はいやに静かに感じた。 ブランコが時々、風できぃきぃと揺れた。
公園の真ん中あたりまで進んだ時、なにかの音が聞こえたような気がした。 立ち止まって耳を澄ましてみる。 すると奥の方から、なにかすすり泣くような声が聞こえた。 こんな時間に。まさか幽霊でもあるまいに。 なんだろう?と目を凝らしてみると ちょうど街灯の明かりが届かなくて薄暗くなっているところにベンチがあった。 そこに誰か座っている。 ……女の人か? ちょっと近づいてみる。 やはり女の人だ。 俯いて、泣いている。 しきりに手で目を拭っていたから、子供かなぁ?と思っていたが もっと近づいてみると、僕と同じくらいの歳の若い女性だった。
普段ならば、僕は知らない人に声をかけたりはしない。 ましてやなにかを悲しんでいるのか、泣いている人に 言葉をかけるなんて余計なお世話だ。くらいに思って素通りだ。 が、この時は酔っていたせいか、なにも考えずに彼女に近づいた。
彼女は、すぐ目の前に立つまで、僕に気がつかなかった。 ずっと俯いていたから。 彼女は、はっと僕を見て、一瞬脅えたような表情を見せた。 その時、はじめて彼女の顔を見て不謹慎にも。 あ。キレイな人だなぁ。と思った。
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