二人ともなにやらおかしなテンションだった。 あんなに悲しそうに泣いてたのに。 さっき泣いてたカラスがってやつだね。 もしかしたら悲しむ事と楽しむ事って紙一重なのかもしれない。 その精神的な働きの上では。
彼女の涙はどうやら違う涙になってしまったようだ。 なんだか良く分からないけど良かったと思った。 なにもしなかったのが良かったのかな。 だまって座ってたのが功を奏したのか。 やるじゃん俺。とか思ってた。 なんせ酔っ払ってたから、 僕もちょっとおかしなテンションだったのかもしれない。
さて。これで心置きなく家に帰れるな。 と思って立ち上がった。 彼女とはほとんど言葉を交わさなかった。 なにも言わないで座ったから なにも言わずに去るつもりだった。
「じゃ。」と言って歩き出した。
すると、Tシャツの裾が引っ張られる。 振り向くと彼女が掴んでいるではないか。 僕はまだなにか用があるのかと思って
「なに?」 と聞いた。
でも彼女はなにも答えず、首を振るだけだった。 おまけにいつの間にやらまた泣きそうな顔をしているし。 どういうこと?
彼女がなにを言いたいのか。僕に何をして欲しいのか ややしばらくそのまま考えたけど、結局分からなくて だから僕はとりあえず自分のしたいことを彼女に言ってみた。
「俺、家に帰るんだけど?」
そうしたら今度は頷くではないか。 一体どういうこと?
まぁ、僕が家に帰ることに反対しているわけではないようなので 「うん。じゃぁ、帰る。」 と言って歩き出してみた。 そうしたら、彼女も僕のシャツを掴んだまま歩き始めた。 あら?どういうこと? 彼女はうつむいたままトコトコと付いてくる。
僕は迷子を拾ってしまったような気分だった。
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