short story


2001年02月18日(日)


28-迷子-
二人ともなにやらおかしなテンションだった。
あんなに悲しそうに泣いてたのに。
さっき泣いてたカラスがってやつだね。
もしかしたら悲しむ事と楽しむ事って紙一重なのかもしれない。
その精神的な働きの上では。

彼女の涙はどうやら違う涙になってしまったようだ。
なんだか良く分からないけど良かったと思った。
なにもしなかったのが良かったのかな。
だまって座ってたのが功を奏したのか。
やるじゃん俺。とか思ってた。
なんせ酔っ払ってたから、
僕もちょっとおかしなテンションだったのかもしれない。

さて。これで心置きなく家に帰れるな。
と思って立ち上がった。
彼女とはほとんど言葉を交わさなかった。
なにも言わないで座ったから
なにも言わずに去るつもりだった。

「じゃ。」と言って歩き出した。

すると、Tシャツの裾が引っ張られる。
振り向くと彼女が掴んでいるではないか。
僕はまだなにか用があるのかと思って

「なに?」
と聞いた。

でも彼女はなにも答えず、首を振るだけだった。
おまけにいつの間にやらまた泣きそうな顔をしているし。
どういうこと?

彼女がなにを言いたいのか。僕に何をして欲しいのか
ややしばらくそのまま考えたけど、結局分からなくて
だから僕はとりあえず自分のしたいことを彼女に言ってみた。

「俺、家に帰るんだけど?」

そうしたら今度は頷くではないか。
一体どういうこと?

まぁ、僕が家に帰ることに反対しているわけではないようなので
「うん。じゃぁ、帰る。」
と言って歩き出してみた。
そうしたら、彼女も僕のシャツを掴んだまま歩き始めた。
あら?どういうこと?
彼女はうつむいたままトコトコと付いてくる。

僕は迷子を拾ってしまったような気分だった。

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日記才人