僕は、いつも一人で帰宅してからするのと同じように 窓を開けて、風呂の用意をして、着替えをした。 それからベッドに寝転んで彼女と一緒にテレビを見た。 なんだったか忘れたけど、面白いバラエティ番組を見て 二人で笑っていた。 知らない人が見ればありふれた日常で、 僕らの関係を知っている人から見れば まったくおかしな光景だったろう。
番組が終わると僕は風呂に入った。 わざと彼女の目の届くところで服を脱いだ。 彼女はチラっとこっちを見たけど 興味もないという風にまたテレビに視線を戻した。 ますます面白かった。 でもさすがに最後の1枚は隠れて脱いだ。
風呂を上がってサッパリ。 と、彼女はテレビの前を離れて僕のCDコレクションを眺めている。 「君もそういう音楽聞くの?」と尋ねると 「うん。こういうの好き。聞きたいのいっぱいある。」 とちょっと興奮気味に答えた。 この女。やっぱりおもしろい。
僕も負けてはいられない。と思った。 これってどういう感情なんだろう? やっぱり負けず嫌い?それとも変な人選手権? よく分からないけど。 僕は「それは後にして。君も風呂入れよ。」と言った。
普通は有り得ない話である。 さっき。ほんの数時間前にはじめて会った男の家にあがりこんで 風呂まで入るか?普通は断るだろう。 でもその時の僕は、彼女はきっと断ったりしないんじゃないかと思った。 そういう雰囲気というか。なんというか。 まるで説明になってないけど。
そして僕の期待通りに彼女は 「うん。今入る。」と言った。
僕は内心穏やかではなかった。 この奇妙な状況を楽しんでいた。 なにやらすごいオモチャを手に入れた子供のような心境だった。
ちょっと残念だったのは 彼女が さすがに僕の目の前では脱がなかったことかな。
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