彼女と過ごした4ヶ月。 もちろん彼女に名前を聞こうと思ったことは何度もあった。 でも、できなかった。どうしても。 時間が経てば経つほどに。 彼女の存在が僕の中で大きくなればなるほどに。 言い出せなくなっていった。
だって聞けないでしょう? それが始まりだったんだから。 彼女の方も、自分の事はなにも話さなかったし 僕についても多く聞かなかった。 つまりそういう関係を彼女は望んでいるのだ。 聞けないよ。 聞いたらどうなるか…。
まさかこんなことになるとはなぁ。 思ってもみなかった。 彼女との出会いの理由が 彼女を失う理由になりかねなくなってしまうとは。
彼女になにも聞かなかったから彼女との関係が始まったのに 彼女について知ろうとしたら彼女を失う。か。
ふと気がついたら底無し沼にはまってしまっていたような。 そんな気分だった。
分かるだろうか。 理解してもらえるだろうか。 僕が彼女についてなにも知らなかったわけ。 なにも聞くことができなかったわけ。
僕は4ヶ月間ずっと、底無し沼でもがいていたのだ。
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