short story


2001年02月24日(土)


34-口封じ-
5日間程の正月休みも終わり僕は自分の家に戻った。
数日留守にしていただけなのに部屋の中はすごく寒々しく感じた。
実家の温かさが一際身に染みた。
まずは彼女の顔が見たいと思った。

2日後、彼女が訪れる。
なんだかすごく久しぶりな気がして少し照れた。
心なしか痩せたように見える。
本人は「ダイエットしたの。」と言っていた。
普通、正月ってのは太るものなんだがなぁと思ったが、
女性の体重減願望には年中行事など無関係らしい。
大体、ダイエットするほど太ってないのに。

彼女が訪れた僕の部屋は
あの空虚な感じなどどこかへ行ってしまったように暖かい。
そこが今、自分のいるべき場所なのだとはっきり分かった。
僕にとっての彼女の存在価値をあらためて認識した。
彼女の名前など、どうでも良いことだ。と自分に言い聞かせた。

僕は地元での事を彼女に話した。
母親の手料理が旨かったことや
大事な親友がいるということも、そいつに彼女ができてたということも。
でも彼に、彼女について尋ねられた事だけは言わなかった。

彼女の正月についても知りたかったが
「私の正月は特に変わったことなんてなかったよ。」
としか教えてくれなかった。
なんだよー。けちー。と言ったら
持ってきたおせち料理を取り上げられたので慌てて謝った。

食い物で口封じとは。おそるべし。と思った。

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日記才人