彼女は僕の問いには答えなかった。 その代わりに 静かに僕に歩み寄って 隣に座った。
そしてそのまま僕にくちづけをした。 金縛りにあったように動けなかった。 なにがなんだか分からない。 頭の中からすべての言葉が消えてしまっていた。
されるがままに。 彼女の抱擁を受けた。 僕は操られるように ゆっくり彼女を抱き寄せた。 それはしたくともずっとできずにいた行為だった。 彼女の髪の毛に顔を埋めると、シャンプーの匂いがした。 なぜか、力を入れ過ぎないようにと気を使った事を覚えている。 そんなことよりも、彼女に聞くべきことがあったはずなのに。 弱々しく背中に回す彼女の腕が、くすぐったかった。
無言でくちづけ。 長い。くちづけ。 彼女の唇は、柔らかく、少し冷たかった。
僕は頭が真っ白で 馬鹿みたいにぽーっとしてた。 行動と思考がまったく一致していなかった。 どちらも、自分の支配を離れてしまったように 勝手に僕を動かした。
彼女はしばらく僕の胸に頬を寄せ、 僕はただ彼女の髪の毛を撫でることしかできずにいた。
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