short story


2001年03月04日(日)


42-窓の内側-
僕はひとつのベッドで
彼女をこの腕に抱いた。
確かに。抱いたと思う。
覚えているから。

暗がりの中にうっすらと浮かぶ彼女の裸体は
とても美しく、
昼間の彼女からは想像もできないほど妖艶だった。
壊してしまわないように、優しく抱くのが難しかった。
僕の支配を離れた感情と肉体が
愛欲なのか性欲なのか分からないような強い力で
激しく僕を彼女の中へと打ち込ませた。
何度も。何度も。
それを彼女は苦しそうに、泣き出しそうに
受け止めていた。

すべてが
靄がかっていたように
遠くの出来事だった。
窓を挟んで見ているような錯覚。

僕は窓の内側から
遠慮がちに彼女を愛した。

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日記才人