英国人の彼女 6年間の遠距離恋愛の末、イギリスに嫁いできました。ロンドンで息子と3人で暮らしています。
index|day before|day after
真夜中、誰もいない院生室で、1人パソコンに向かっていると、自分がどこにいるのかわからなくなる瞬間があります。
耳にはイヤホン。流れてくるのは、Tinariwen。脳裏によみがえる青い空。揺蕩う時間。
あの国に着いてしばらくは、週末が来るのを恐れていました。何もしない、ということに慣れなくて。
-----
時間は、この国では時として遅々と進まない。とくにテラスの揺り椅子に座り、空を眺めているようなこんな午後は。
塀の上10センチのところにたたずむ灼熱の太陽は、膝の上の猫が喉を鳴らすのをやめ、いつの間にか眠ってしまった今もまだ、同じところにある。非の打ち所のない空はあくまで青く、偽バナナの葉が風に揺れている。このおかしな名前の植物は、バナナと同じ外見を持ちながら、決してバナナの実はつけないという代物である。ただしこれもバナナの名に恥じず、立派に食用としての役割を全うしている。葉は板状の食材に加工され、生肉と共に食されるのだ。
往来から、羊や犬やロバや、人々の喧噪が聞こえる。一枚の壁に分断された内側からは何の音もしない。ただ過ぎてゆく時間。わたしはいま、何かを失っているのだろうか。
猫が不意に空を見上げ、鳥の羽ばたきが聞こえた。青い小さな鳥。そういえば門番はどこにいるのだろう。そして3匹の犬たちは。カップの中のコーヒーは冷めてしまった。
太陽はまだ、お気に入りの場所から動こうとしない。
-----
昨日の日記は、こちらからリンクして頂きました。
index|day before|day after
|