拙者はファン倶楽部の皆さんに生娘麗子ちゃんと呼ばれているくらい、日々デッドリーシリアスに生きているので、真面目でなさそうに、(なさそうに、ね)生きている人が本当に羨ましい。町田康、または町田康が演じているように見える町田康という人物のことが好きな理由はそこだ。
ところで先日、毎週貧乏人を紹介しているどうしようもなく生産性のないテレビ番組、『銭形金太郎』(テレビ朝日)に大変興味深い人物が出演しているのを目にした。49歳詩人貧乏さんである。お金がないので女性への贈答品はすべて愛の弾き語り(これがまたひどい歌だった)。貢ぎ癖があるのでいまだに貯金はゼロ、だという。拙者は彼を見て何を思ったか。「ああ、49歳になってこんなどうしようもない生活しててもどうにかなるんだねえー」という身も蓋もない感動に浸ってしまったのである。別に本人が楽しいのか知らないけれど、はは。そう、はは、と笑ってしまうのであるよ、こちらが。
ここまでいったら恐いものなしだ。恐いものなしといえば。友人が「家賃を3か月滞納してるしヒモになっちゃってるし、今ポケットに130円しかないからCD売って電車賃を出さないと仕事に行けない」と嘆いているのがあまりに可笑しく、「ははは」と笑っていたら、本気で怒られた。君のいいところは君がヒモになってる姿をまわりが想像して笑ってるところなんじゃないですか、と怒られながら拙者は思う。家賃を3か月滞納し、体を売りながらポケットに130円しかない時に、はは、と笑ってもらえる人に、拙者はなりたい。まあしかし生娘麗子嬢の場合、どうせ「首吊るなよ」とデッドリーシリアスな電話がかかってきてしまうのが落ちだろう。
なんてなことを考えていたら、筒井康隆が週刊ブックレビューで、今文学に必要なものはファンタジー、笑い、実験だとおっしゃる。そうだよ、笑っちゃいたいよね。はは。ははは。この人は町田康を押してくださっているから、大好きだ。ああ、引用がふたつともテレビジョン。
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