最近実(じつ)のないポエムばかり書いているのは、花粉症で何もやる気が起きないからだ。仕事でもここの日記を書く時でもつくづく思うのは、何かを言ってるようでよく見るとなにひとつ伝えていない空っぽの文章やポエムを書くことは、具体的にかみ砕いて事実のみを(そんなことはありえないのだが、せめて努力をして)並べることに比べ、なんと楽なことだろう。
たとえば、「人と接することがやりがいです」というアルバイトさんのセリフ。毎週毎週聞くこの言葉の奥にある、「人」「接する」の多様性に驚く。似たような仕事をしていても、同じようなぐうたら学生の、たかがバイトだとしても、それぞれが日々触れているディティールは、(恐ろしいほど当たり前のことだが)全員違う。
大学時代の先輩に会った。「俺は大学の頃、多分バナナのことが好きだったんだと思う。ずっと気が付かなかったけど」と言われた。でも友達でいたおかげで、こうして今でも楽しく話せるわけだし良かったよ、という大人な会話をして別れた。彼に言われた言葉が少し気になった。「結局君には壁がある。呼びかけてはいるけれど、結局それは自分の領域っていうか、世界の中から相手を呼んでいるだけなんだ。いざこっちが近づこうとすると『いえいえ、私なんていいんです』と言って離れていく。とぼけたふりをする」と。
久しぶりに椎名林檎の『勝訴ストリップ』を聞いた。圧倒的なボーカリゼーション。ウォークマンで聞いた時、まわりの景色を一変させる感情の強さ。これほど伝える欲求の強い音楽を私は知らない。そして、歌われる気持ちは決して重くも暗くもないことに気付く。
|