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2006年05月09日(火) それでも今日も暮らしていく

ゴールデンウィークは、カレンダー通り休んだ。ここで旅行に行かないとこれから半年くらい働けなくなる、と直感的に分かったので、尾道に海を見に行った。最近、こういうお金は一切惜しまないようにしている。

坂道を息を切らせながら上って、海を見下ろす。波のない、穏やかな瀬戸内海。「初夏」の太陽が照らす。歩き疲れて、ベンチに腰掛ける。カメラで猫を追いかける。一人でそうしているうち、たまりにたまった(ことさえ気が付かずにいた)汚い何かが、どろどろと出ていった。

寺社めぐりの道のりを、小さな路地がうねりうねってつなぐ。坂の傾斜には斜めになって倒れそうな、木造の古い家屋が並んでいた。天気がいいから、どの家も洗濯物を干している。私は他の家の洗濯物が好きで、ついつい写真に撮ってしまう。幸か不幸か知らない誰かの日常が、そこにあることにほっとする。ある路地を通りかかると、お線香の臭いがした。おばあちゃんちの、あの懐かしい香りである。

坂の頂上あたりで、「山頂からの眺めをどうぞ」という看板に出会う。ごつごつした岩山を鎖をつたって登ると、今よりもさらによい眺望が開けると誘っている。スカートにパンプスだったが諦めるわけにはいかず、前に並んだ家族連れの、子どもたちに混じって登った(後ろには若い男の子2人組がいたが、多分私のパンツは丸見えだったんじゃないだろうか)。

何が嫌かと問われれば何も嫌なことはない、仕事は嫌いかと問われれば好きだと答える私だ。それでも、(何度も書いたことだけど)多分日々感じる目先の様々な喜びや悲しみは、この海辺の町の夕暮れの風や、朝日に光る船の脇腹の美しさや、夜に路地脇の食堂で食べた美味しいキスの天ぷらの前に完全に敗北する。

旅行から帰って開いた朝日新聞で、「分裂にっぽん〜しまなみ海道から〜」という連載が始まっていた。尾道と今治をつなぐ「しまなみ海道」沿いの暮らしを取材。堕ちていく地方と中央(東京)の格差を浮き彫りにする内容だ。第一回は、尾道の高齢者が坂を下りる辛そうな写真が掲載されていた。

彼らも、私も大変だ。それでも今日も暮らしていく。


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