橋本裕の日記
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2000年12月25日(月) 手作りのたのしみ

 一昨日から妻が寝込んでいる。目の奥が痛いので、本人は「くも膜下」かも知れないと言うが、たぶん風邪だろう。妻が寝込むのは今年はじめてのこと。ちなみに私は一度も寝込まなかった。医者にかかったのは歯医者と、テニスボールを急所に受けたときだけである。

 そういうわけで、昨日は私が主婦業をした。つまり買い物に出かけ、料理を作って妻や娘達に食べさせたのである。私のつくる料理といえば、「豚鍋」が今のところ定番である。大学生の頃、私は4年間自炊していた。毎日曜日によってメニューを変えていたが、その中の一つが「豚鍋」で、他に酢豚、焼きめし、ブリの照り焼きなど、7種類のメイン料理があった。

 料理を作りながら、久しぶりに豊かな気分になった。大学時代も、思い出してみると、料理を作るのがそれほど苦ではなく、たのしみだった。また、楽しみだったからこそ、長続きしたのだろう。大学の食堂や、近くには手軽な大衆食堂がいくらもあったが、やはり手作りの味は捨てがたい。

 大学時代、私は学生運動に挫折し、一時精神状態が最悪だった。そんなとき「万葉集」に出会って、精神の活力を取り戻したわけだが、今考えてみると、やはり下宿先の寺で自炊を続けていたということも大きな支えではなかったかと思う。「食」というのは生きる上での根本である。それを他人まかせにせず、自分で行うということは、自分の荒廃した精神を回復させる上で効果があったと思う。

 そういえば、ある作家の作品に「鍋の中」というのがあった。小説を書くこともどこか料理と似ている。とくに私の場合、自炊の経験が小説を書くことに何か影響を与えているように思える。精神が自立する上で、この二つの行為が私にとって大きな支えを与えてくれたようである。



橋本裕 |MAILHomePage

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