橋本裕の日記
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日経新聞「教育を問う」によると、昨春、東大医学部の医師国家試験の合格率が八割を割り、国公立五十一大学の中で四十番目になったのだという。教授会では「学部長は腹を切れ」などという激しい言葉が飛び交ったらしい。
「東大医学部に進む理科三類の入試偏差値は全国一。だが四年生の留年率は十五%まで上昇した。元医学部長の矢崎義雄国立国際医療センター総長は、大半の学生は優秀だと断りつつ「入学後に目標を失って無気力になる人もいる」と話す。患者とうまく意志疎通ができない医師の卵たちに悩んだ東大は、一九九九年度入試から理科三類だけ、全員に面接を課している」(2000/10/25)
私のかっての教え子のT君は、東大理科一類に進学したが、夏休みに母校へ遊びに行ったら、進路担当の先生に「どうだ、もう一度受験しないか。今度は理三でどうだ」と声を掛けられたという。夏休みに私の家に遊びに来て、まんざらでもないような顔でいうので、驚いたことがある。結局彼はそのまま数学科に進み、東京海上火災に就職した。
しかし彼の同期生のS君は名大の理学部に進学していたが、母校に遊びに行ったばかりに、「お前、来年医学部を受けてみないか」と話を持ちかけられて、結局翌年名古屋市立大の医学部を受験した。こうしたことが、私の身近で起こっているのを眺めながら、これでは日本の科学技術の将来は暗いなと思ったものである。
別に医学部に進学するのが悪いわけではないが、ただ受験の偏差値が高いと言うだけで、医学部を選ぶというのはどうだろうか。進学塾や高校の進路指導のありかたが問われても仕方がないと思う。東大医学部の医師国家試験の合格率が八割を割り、国公立五十一大学の中で四十番目になったと聞いて、私はさもありなんと納得してしまった。
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