橋本裕の日記
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2001年01月22日(月) |
「日本沈没」に備えて |
野口悠紀夫さんが、新聞や雑誌のインタビューで、「日本がどうなるかは、あまり重要でない」と主張している。彼は「超整理学」などの著書で有名な東大の教授だが、日本経済の構造改革の必要性について早くから警鐘を鳴らしてきた国際派の経済学者である。構造改革の立ち遅れ、政治家の資質低下など、日本の将来を悲観して、いよいよ日本を見限ったのだろうか。彼はこのように書いている。
「日本人が海外で個人として活躍するには、言葉の問題がある。しかし最も重要なのは、活動の場が国内に限定されないと認識することだ。これまでは、日本の経済成長が急速であったため、生活環境が異なり、知り合いも少ない海外にわざわざ職を求める必然性は乏しかった。しかし、事態はすでに大きく変わっているのである。日本の国内でベンチャーが成長できる環境整備を待つよりも、海外で事業を起こすほうがずっと早い」(朝日新聞2000/12/09、以下同じ文章から引用)
日本の国内の構造改革はもはや絶望的な状況になりつつある。国債はふくらむ一方だし、金融機関には20兆円以上の公的資金を投入しながら、不良債権の償却は一向にすすまない。もはやだれの目にも日本という国の経済的破綻はあきらかである。しかし本当に恐ろしいのは経済的破綻ではなく、モラルの破壊だろう。政治家も官僚も経済界も、すっかり腐敗しきっている。そして国民もただなりゆきに身をまかせることしかできない。
こうした国の全面的な機能不全と破綻を前に、資産者階級はすでにほとんどの資産の国外退避をすませているという。彼らにとっては国が破綻しても、経済的実害はない。日本が住み難くなれば、海外に移住して、そこでのんびりと豪華な余生を楽しむことができるし、ビジネスだって出来る。日本にしがみついて、不利益や不愉快を被ることはない。やがて日本を代表する大企業も、海外に本社を移し、税金の高い日本から撤退することを考えるようになるだろう。
「年金受給者、公共事業に依存する産業、規制や保護政策で守られる産業にとっては、国の命運が決定的に重要だ。しかし、自立できる能力を持った人たちにとって、国家の意義はますます低下する。思考法をそのように変えることこそ重要だ」
野口教授に言われても、われわれ庶民はそう簡単に思考法が変えられるかどうか。沈没する船に取り残されて、割の合わない目をみるのが、たぶん大方の我々の運命だろう。しかし、この沈没する国家と運命をともにしたくなかったら、自立した個人となって、海外のどこでも生活できるだけの力量をみがくことが必要である。
私たちの世代にはそれはむつかしいことだが、若い世代の人は、このことを考えて人生の設計をしたほうがよい。考えてみれば、それはとてもやりがいのある、面白い生き方ではないか。国という古いしきたりや発想法にとらわれない新しい生き方が、これからの日本人にもとめられている。賢い人たちは、もうそうした生き方を始めているのだろう。
野口悠紀夫さんが、新聞や雑誌のインタビューで、「日本がどうなるかは、あまり重要でない」と主張している。彼は「超整理学」などの著書で有名な東大の教授だが、日本経済の構造改革の必要性について早くから警鐘を鳴らしてきた国際派の経済学者である。構造改革の立ち遅れ、政治家の資質低下など、日本の将来を悲観して、いよいよ日本を見限ったのだろうか。彼はこのように書いている。
「日本人が海外で個人として活躍するには、言葉の問題がある。しかし最も重要なのは、活動の場が国内に限定されないと認識することだ。これまでは、日本の経済成長が急速であったため、生活環境が異なり、知り合いも少ない海外にわざわざ職を求める必然性は乏しかった。しかし、事態はすでに大きく変わっているのである。日本の国内でベンチャーが成長できる環境整備を待つよりも、海外で事業を起こすほうがずっと早い」(朝日新聞2000/12/09、以下同じ文章から引用)
日本の国内の構造改革はもはや絶望的な状況になりつつある。国債はふくらむ一方だし、金融機関には20兆円以上の公的資金を投入しながら、不良債権の償却は一向にすすまない。もはやだれの目にも日本という国の経済的破綻はあきらかである。しかし本当に恐ろしいのは経済的破綻ではなく、モラルの破壊だろう。政治家も官僚も経済界も、すっかり腐敗しきっている。そして国民もただなりゆきに身をまかせることしかできない。
こうした国の全面的な機能不全と破綻を前に、資産者階級はすでにほとんどの資産の国外退避をすませているという。彼らにとっては国が破綻しても、経済的実害はない。日本が住み難くなれば、海外に移住して、そこでのんびりと豪華な余生を楽しむことができるし、ビジネスだって出来る。日本にしがみついて、不利益や不愉快を被ることはない。やがて日本を代表する大企業も、海外に本社を移し、税金の高い日本から撤退することを考えるようになるだろう。
「年金受給者、公共事業に依存する産業、規制や保護政策で守られる産業にとっては、国の命運が決定的に重要だ。しかし、自立できる能力を持った人たちにとって、国家の意義はますます低下する。思考法をそのように変えることこそ重要だ」
野口教授に言われても、われわれ庶民はそう簡単に思考法が変えられるかどうか。沈没する船に取り残されて、割の合わない目をみるのが、たぶん大方の我々の運命だろう。しかし、この沈没する国家と運命をともにしたくなかったら、自立した個人となって、海外のどこでも生活できるだけの力量をみがくことが必要である。
私たちの世代にはそれはむつかしいことだが、若い世代の人は、このことを考えて人生の設計をしたほうがよい。考えてみれば、それはとてもやりがいのある、面白い生き方ではないか。国という古いしきたりや発想法にとらわれない新しい生き方が、これからの日本人にもとめられている。賢い人たちは、もうそうした生き方を始めているのだろう。
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