橋本裕の日記
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2001年02月20日(火) 野の花のように

 一昨日、ビデオで「この森で、天使はバスを降りた」というアメリカ映画を見た。殺人を犯して刑期を終えた少女パーシーは、ある冬の夜、北部の寂れた田舎町のバス停に降り立つ。そして老婦人が経営する古ぼけたレストランで働きはじめる。

 町の人々は猜疑心がつよく、いがみ合いながら、人生に希望が持てなくなっている。自分たちの住んでいる土地をのろい、教会や美しい森にも目を向けなくなった人々。そんな彼らの頑なな心が、少女の純粋なやさしさによって癒されていく。少女が町の人々に与えたものは、生きることの「希望と勇気」だった。

 希望と勇気は仲のよい恋人のように、いつも連れだっている。希望のあるところに勇気があり、勇気のあるところに希望がある。希望は人生を照らす明かりであり、その中に身を置くとき、勇気がわき起こってくる。

 そして、愛とはつまり、希望と勇気をはぐくむ豊穣な大地である。愛があり、希望と勇気のあるところに、人間の幸福がある。愛が大地であり、希望と勇気が葉や茎や根であるならば、幸福とはそこに咲く花であろう。

 あるいは、こうも言える。幸福とは満たされた人生の中にあるのではなく、逆境の中で自らの運命を切り開く戦いに中に生まれる。逆境はときに大地のあたたかさを教え、勇気と希望の貴さを教えてくれる。ほんとうの幸福は、北風の中でけなげに咲く一輪の花のように清々しい。

 映画の中の少女パーシーは、逆境の中で希望と勇気を失わずに、けなげに生きていく。そして、多くの人々が忘れかけていたもの、幸せを感じる能力や、他人を愛したり思いやることの喜びを、人々の胸に温かく蘇らせた。


橋本裕 |MAILHomePage

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